折り畳み神話
歩弥丸
銀染めの空
最初に光があった、という。
光しか無かった空というのは、それを見ていた神様が居たのかどうかも怪しいが、兎も角何処も彼処も光に満ちていたわけで。
「それって銀色なんじゃないかと思うわけよ」
ゼミ棟の窓越しに、空を仰ぎながら僕は言った。
「白じゃなくて?」
先輩はこっちを振り向いて言った。
「色を観てる何かが『いる』以上、何か偏りは出ると思うんだよね」
それは観測者がいるならば確率は収束するはずだ、というくらいの意味合いだったのだけど。
「いや、『居ない』でしょそんなの」
即答された。
「ビッグバンの瞬間、或いは空間のインフレーションの瞬間。そんなの『知覚する』存在なんて居るわけがないし、そもそも光子かその前段階のエネルギーに満ちた状態ってのも数学上の仮説でしかないんだし」
それは科学的には御尤もな話なのだけど。
「だったら『白じゃなくて?』って何なのさ。『白』なのを見てる誰かを想定したんじゃない?」
どうしても揚げ足を取りたくなってしまう。
「そ、それは……『光子に満ちた』状態なら、っていう……言葉のアヤよ。それとも何? 君、神論者だっけ?」
「そんな大層なもんじゃない。ただ、田舎者だった僕には不思議な話、神様の話や化け物の話などは余りに身近だったので。神様……でなくても、『何かいる』ことを否定までは仕切れなくて」
「神様や化け物の話?」
「そう。まあ僕が見た訳じゃないんだけど」
「じゃあそれがどれだけの現実味のあるモノなのか、聞かせて貰おうじゃない。時々ツッコミ入れるけどね」
「えー……?」
こうして、時折先輩に昔話を聞かせる、変な日課が始まったんだ。
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