アブとハチと留年生
ハチの炸裂弾と化した針がアブの脇腹に突き刺さる、3日3晩に渡る決闘も終わりが近い。
かつてアブとハチはバンドを組むほどの仲だったが、アブが夜な夜な公園に来る人間を狩り始めてからだんだんとその仲に亀裂が入っていった。
アブは悲鳴をあげて体長5kmにも渡る体を倒した。
「すまない、こうするしかなかったんだ」
ハチはアブの凶行を止めるため、決闘に挑んだのだ。 青く輝く青春、私たちはどこで間違えたのだろうか。 アブの息の根が止まった。
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私は柳川、大学生だ。 今日は友人から怪談サークルの誘いがあり、大学の一棟へ来ている。
「久しぶりだなぁ、柳川、栄養はちゃんと取ってるか?」
私の大学からの友人である山下とは、化け物に襲われて病院送りになっていたこともあって2週間ぶりの再開だった。
「つい先日に◯スバーガーで思う存分取ってきたさ、その時に出会った異星人についてメールで話したろ?」
山下はすっかりそのことを忘れていたらしく、首を傾げた。
「で、何の用なんだ? わざわざ大学にまで呼び出して」
山下からの連絡はかなり強引なものだった。 とにかく来て欲しい!と電話で何度も言われたので、わざわざ大学まで来たのだ。 実りのある話だと良いが。
「ああ、すまん、久しぶりに柳川の顔が見れて興奮してしまった。 とっておきの怪談を持って来たんだ、聞いてくれ」
山下の気味の悪い言葉を受け流し、本題に入ることとした。
「全長4kmのアブが、夜中にロックな音楽を流した奴を跡形もなく消し飛ばしているらしい」
「気が狂ったのか?」
余りにも荒唐無稽だ。 元からおかしい奴だとは思っていたが、まさかここまでとは。
「いや、これがかなり信憑性の高い怪談なんだ! 信じられないだろうが」
そう言うと山下はある一本の動画を見せてきた。 …….そこにはバカデカいアブがモヒカン頭の青年を空にブチ上げてなぶり殺しにする光景が映っていた。
「これでもう荒唐無稽とは言えないだろ?」
山下は自慢げに言った。
「分かったよ、それでこいつをどうするんだ?」
「捕らえて賞金を得るんだ、これを見てみろ」
山下が差し出したスマホには、[巨大怪虫捕獲モトム、懸賞金ハ1000万ナリ 中海 宗一] と古風な字体で書かれていた。 中海宗一といえば今テレビで話題の政治家だ。 財布を潤すチャンスかも知れない、暇潰しにもいいだろう。
「よし、早速準備に取り掛かるぞ!! 山下ぁ!」
「その言葉を待っていた!!」
私達は手早くバックにカメラとスマホ、護身用の武器を詰め込み、怪虫捕獲に出かけた。
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