第60話 「K君と僕」
昨日、久しぶりに一人息子と話した。
リアル息子は書けないから、小さい頃の思い出の引用なのである。
★ ★ ★ ★ ★ ★
「パパ描いて、描いて!」
大きな模造紙は、もう4枚つなげられ、大きく大きく広がっている。
さて、僕は何をしているのか?
僕は自宅と、自宅周辺の手作り「リアル地図」を作っていた。それもイラスト付きだ。
図画工作、水彩画などクリエイティブな事が大好き父の本領発揮なのである。
その距離は自宅を拠点に、10キロ圏内まで書かれていてバカみたいに大きな地図だ。
こんな地図は売ってないから作ればいいんだ。
まず〇町1丁目点滅信号のある交差点の3軒目に我が家を描いた。
あたり前に、主役の我が家の絵は大きく目立つように描く。そのへんの総合病院や学校よりでっかいのである。
家のイラスト、家の窓から顔をだすのは、妻とけいくんと僕である。
Kくんは、どんぐりみたいにくりくり眼に、口はニコチャンマークの口、ほっぺぷっくり、かわいいイラストで描かれている。シャツは青く色鉛筆に塗り、半ズボンは黄色である。
Kはかわいい顔をしている。さすが自称イケメン父ちゃんの息子だ。4歳である。徒歩10分の○○保育園に通っている。
目は僕ほど大きくないが、何かくりっとしていて、妻の家系の遺伝で、くるっと巻いた目頭が特徴だ。眉間にたまに困ったようなシワが出来た。
優しくいつもニコニコ天真爛漫。眉は薄くて、平安時代の貴族みたい。僕にも妻にも似ないで、なぜか少し色白である。青いトレーナー、茶色いズボン。トレーナーにはわけのわからない英語が30文字くらいデザイン的に並べられている。
「パパ〜。警察署の先の曲がったとこに自転車屋さんがあるよ」
けいは、4歳なのに、なぜか乗り物や、道が好きで、空間記憶を激しく鮮明に記憶する。
車にのっていても「パパ、あの先のコンビニを曲がったらうどん屋さんの大きい道に出るから、おうちの警察署の通りに近いよ」とか言うのである。
「あっ。そ、そうなんだ。パパは道がわかんないから、じゃあ、けいくんが教えてよ」
4歳に道を教わる父親って…。
「なんでパパって、道を覚えられないの?」
「…う、うん。なんでだろう。わかんない」
私は運転が著しく嫌いで、また方向オンチが甚だしい。やらないでいいことは極力やらない、そんなタイプの人間である。あまり良いとは言えないな…。
脱線した。
今は自転車屋さんを描いている。
「自転車屋か。わかった、まってろよ」
カキカキコキコキキュッキュッキュッキュッ。
僕は、先が5ミリくらいの水性サインペンを愛用していて、すぐに、自転車屋さんを、警察署の先の、曲がった道に書き入れる。
「うん。自転車屋さんはおじいちゃんがいるよね」
カキカキコキコキキュキュッ。
僕はつるハゲのおじいちゃんを書いて、片手を、「ようこそ」みたいにしている手を添えたのである。
「自転車屋さんだあ」
けいくんは、嬉しそうに笑いながら、地図にミニカーを置いて走らせる。
「ブーン、警察署の先の交差点を曲って自転車屋さんにきましたあ。自転車ください」
「はいはい。3万円です。」
「はい3万2千円あげます」
「ありがたや〜。パパ貧乏だから、けいくん助かります。ありがとうございましたあ」
「じゃあね〜♫」
★ ★ ★ ★ ★
………頑張れな、K君。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます