第24話 ゆうごろうくん
いつか書こうとしていたが、かけなかったんだ。いろんなひとの気持ちはあるが僕の中にあるゆうごろうくんがいる。書かせてほしい。
端的に言うなら「リアル君膵」の気持ち。
君の膵臓をたべたい。僕は、あの映画を見た時に、あの日の似た感情を思い出した。
高2の時に、ゆうごろうくんが交通事故で亡くなった。はじめて身近な人の死と直面した体験かもしれない。
中学生の時に彼に初めて会った。違う小学校から来たからだ。
彼は背が高くイケメンでバスケットボール部。バレーボールもうまかった。中学2年にクラスがたぶん一緒だった。ゆうごろうくんはたぶん学年一番の人気者だったんじゃないかな。
明るくて、良く笑う、爽やかで、男らしくて誰にも等しく優しい、友情に熱い、欠点はわからない。
僕は、自伝にあるように浮きまくり少年だった。しかしゆうごろうくんは、僕に「違う」とか「だめ」とか否定的な言葉は、一言もいったことがない。
僕は、先生をバカにしたような態度は出すし、笑いを取れたらいいくらいに、考えて、軽率な発言もした。正義感はもちろんに強かったが、フツーに見て、不真面目かつ反抗的少年だった。
しかしゆうごろうくんはいつも僕にこう言って笑っていた。
「れいくんは、本当に、面白えなあ。」
彼の笑顔と言葉の響きを忘れない。深い話なんかはしたことはない。
でも彼に何を話しても包み込む優しさと包容力があり、僕は、安心して、ゆうごろうくんを笑わした。
ジャンパーを着ていたから、高2の冬か、葬儀に行った。母親も行った。準備が慌ただしく頭も混乱していて、家の母親もぼくもバカだから僕は、当時お母さんが誰かからのお古でくれた綿生地の白いスタジアムジャンパーを着たまま参列してしまった。
葬儀は畳の部屋。真っ黒い服をみんなが着ていた。たくさんの同級生。制服を着ていた人もいて考えてみたら学年服でいけばよいだけだったのに僕は何故白いジャンバーだったんだ。みんなが泣いていた。嗚咽していた。
彼は高校でもバスケット部で県代表(日本代表?)みたいなトップレベルの有名人選手になっていたと後から聞いた。同じ高校にいたけど知らなかった。
僕はその時に泣けなかった。
みんなが泣いていたのに僕だけがなぜか泣かなかった気がする。なぜなかなかったんだろう。みんなが泣いてるとなけない。まずそれが一つあるかもしれない。なんでかはわからない。
あとおもっていたのは、
「部活の仲間、親しい友人、ゆうごろうくんのお母さん」
僕より悲しいに決まっているひとがたくさんいるのに、僕が泣いたらおカド違いだ。
そんな風に考えてしまった。そこがリアル君膵だった。
でも、泣いて良かったんだ。悲しければ悲しいときに泣いてあげないといけなかったのに。僕はなんて冷たい事をしたんだろう。
ずっと考えていた。ゆうごろうくんの仲間がゆうごろうくんをその後に語っても、僕が語っては行けない気は今でも実はかなりある。
たぶん、Iくん、Yくん、この2人が浮かぶが一番仲良かったんじゃないか。従兄弟のS、お母さん。
僕は、未だに語れないでいた。でも今初めて文章化した。人生の、本質は何かでも触れた亡くなった友人が、ゆうごろうくんだ。
家の母親はゆうごろうくんのお母さんを励ましにかなり毎日みたいに通っていた気がする。家のお母さんはそんな人だ。
僕は実は「ゆうごろうくんを語ることでみんなの心に生き続ける」なんて言ってるが、実際は、多くは語れなかった。
あれから30年くらい時間は過ぎた。しかし何か変わったかと言うと変わらない気はする。
僕が死というものに直面し、生きていることがありがたく感謝しかないことを間違いなく教えたのはゆうごろうくんだ。
今日泣いた。30年経ってしっかりと泣いた。
君の分まで生きると言いたいが、人の死を埋め合わせるほど凄い生き方なんて僕にはできない。埋め合わせられるわけもない。
ただこれは言える。
「ゆうごろうくんみててくれたんだろ。僕達みんなを空から。僕は、君の優しさに触れ、優しさを描く詩を描くし、小説を書いている。今幸せに生きている。大変苦労して心配かけたけど、これからも、一生懸命に生きていく。いつか僕が死んだ時に一緒に酒を飲みたい。好きなおんなの話をきかせてくれ。好きな君の大事なものや、大切にしていた事を君の口から聞きたい。」
ゆうごろうくんありがとう。みんなと出会ってくれてありがとう。
ありがとう。ごめんなさい。今も僕より悲しむひとになんていわれるかはわからない。
これが僕からのメッセージです。ありがとう。ゆうごろうくん。君が大好きだった。
しかし、やはり、僕はこのような想いを同級生にうまく伝えられない。
ゆうごろうくんなら、言うだろうな「れいくんだいじょうぶだよ。気にすんな。」
そうだ。誰もにわかってくださいなんて、わかってもらいたい、つまらない自己満足なんだ。僕は自分のだめさにやはり気づいて、だから、なお、一生懸命生きるだろう。
マジメに言って僕はただ命を燃やすだろう。
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