第9話 イスカミューレンとリズディア
リズディアとイルルミューランの結婚は、イスカミューレンの長年による策略であった。
小さい頃から聡明だったリズディアなら、帝国の経済面に大きく貢献できると考え、出来れば自分の息子に嫁がせ、商会の後継者にと考えていた。
それは、東の森の魔物から、国土を守るために必要な帝国軍の維持には、莫大な資金が必要になる。
帝国は、ギリギリのところで、帝国軍の維持の為に使う費用の捻出に常に悩まされていた。
そんな中、イスカミューレンは、リズディアの才能に、帝国の経済面を担う力を見出したのだ。
皇城で王女として、他国や国内貴族に嫁がせるなら、自分の元で経済面を担う人材にしたいと、イスカミューレンは考えたのだ。
リズディアが幼少の頃、皇帝に話し相手で呼ばれたイスカミューレンが、話の最中に急用で呼ばれた皇帝の談話室で一人で居ると、幼少のリズディアが、イスカミューレンの相手をしてくれた。
「お父様がご不在になり、お客人をお一人にするのは心苦しく思います。 つきましては、父上がご不在の間、私がお相手させて頂けないでしょうか。」
そう言って、一人でいたイスカミューレンの元に入ってきた。
快く迎えたイスカミューレンだった。
最初は子供の話と思っていたが、話をしているうちに帝国の経済的な話になってしまい、それを熱心に聞くリズディアに、これはひょっとしてかなりの逸材ではないかと考える。
その後、リズディアもイスカミューレンの話が気に入り、その後、皇帝との談話に一緒に来る様になった。
何度も3人で談話をする事で、リズディアの才能に確信を持つイスカミューレンだった。
何とかリズディアに、帝国の経済面を支える人物に育ってもらえれば、帝国も安泰だと考えたイスカミューレンは、その時、生まれて間も無い自分の息子であるイルルミューランの嫁に出来ないかと考える。
下級貴族の息子に第一皇女を嫁がせる事は不可能に近いが、可能性は無い訳ではない。
そう考えたイスカミューレンは、リズディアが幼い頃から、皇帝陛下に呼ばれた際は、イルルミューランを連れて行くことにした。
皇帝とリズディア、イスカミューレンとイルルミューランの談話がこうして始まった。
イスカミューレンの話を聞きたがるリズディアなのだが、皇帝に子供同士で、お話しされた方がリズディアの情操教育によろしいでしょうと、リズディアより4歳年下のイルルミューランを連れて、話に飽きたら子供同士で相手をさせた。
その頃の、イルルミューランは、年上のリズディアを姉の様に慕う様になり、皇帝との談話の際は、必ずイスカミューレンのお供をした。
イルルミューランとしては、年上の綺麗なリズディアに会う為だった。
また、リズディアも年下のイルルミューランを好意的に受け止めて、弟の様に可愛がった。
2人を子供の頃から、合わせる事に成功させたイスカミューレンは、2人の間に良い関係を築かせる事に成功させている。
時には、イルルミューランの勉強をリズディアが手伝ったりと、純粋に懐いてくれているイルルミューランを、兄妹には無い物を見ていたのかもしれない。
その後、リズディアには何度か縁談が舞い込む事になるが、その都度、リズディアは断っていた。
最初の縁談は、リズディアが15歳の時だったが、断り切れずにイスカミューレンに相談している。
ただ、イスカミューレンとすれば、おもてだって、縁談を断らせるわけにはいかないので、断腸の思いでリズディアの縁談を進める様に話を持っていったのだが、リズディアはがんとして縁談を進めようとはしない。
困った、イスカミューレンは、帝国の弱い部分をリズディアに教える。
特に、新興国という事もあり、他国と比べて教育面に遅れがあった事、東の森の魔物の脅威のために帝国は、軍事力を他国より使う必要があるので、その為の経済的基盤を、さらに充実させる必要があることを教える。
すると、リズディアは、その内容を元に、自分が帝国にとって有用とされる方針を考えてしまうのだった。
そして、その時の縁談は、リズディアが皇帝に、断る理由を述べている。
「私は、帝国を学者にも広く開かれる必要があると考えます。 帝国の学力向上は帝都に優秀な人材を集める為に必要となります。 私は女の身の上ですので、皇帝陛下のお役に立つにはそう言った人材を集めるためにお役に立ちたいと考えておりますので、今回のご縁談はご遠慮させていただきたく存じます」
学校でも優秀な成績を収めていたリズディアだった。
「この上は、更に勉学に励み、お父上のお役に立ててみせます」
リズディアに、最初の縁談を断られた、皇帝のエイクオンにしてみれば、目の中に入れても痛くないリズディアなので、願いは叶えたいと思っていたのだが、体面上それはできない。
そんな、皇帝エイクオンに、新たな提案をする。
「帝国において、必要なのは、経済力です。 特に帝国は、東の森の脅威がある為、他国と比べて軍事費に充てる費用が多くなっております。 その為にも経済力を上げることは、帝国の為でございます。 そして、その経済力を維持向上させる為には人材が必要となります。 私は、嫁として政略結婚の道具にするより、人材育成を行う為に帝国に基盤を築きたいのです」
だが、それを証明する必要があると、問いただされるので、リズディアは案を提示する。
「では、弟のツ・リンウイ・イヨリオンを私が家庭教師をして、成績を伸ばして差し上げます。 彼の成績が伸びなかった時は、どこの国でも嫁に行って差し上げます」
そう啖呵を切ってっしまったのだ。
皇帝は、可愛がっているリズディアの為、他の皇女の様に強く言えなかった事もあることと、兄弟の中では、1番の成績を残しているリズディアが、兄弟の中でも、成績の悪いイヨリオンの家庭教師をかって出たことで、意見を通してしまったのだ。
ただし、イヨリオンの成績が伸びなかった場合は、縁談に応じるという条件を付けたので、リズディアの意見が通ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます