第15話 大規模調査
フィールブロン最大級の冒険者パーティー【
衆目を集めないわけがない。
冒険者ギルドに向かう道すがら、いろんな人の視線や噂話に晒されていた。
「ヴィム、君の名前が聞こえたぜ」
ハイデマリーがニヤニヤして肘で小突いてくる。
「やめいやめい」
言われると気になってくる。
確かに俺のことを指しているような声がちょくちょく聞こえてきていた。あいつが、とか、あれはヴィムか、とか。
そりゃあいい顔されないよなぁ。
パーティーを追い出されて早々、大手パーティーに寄生だなんて、コネを疑われても仕方がない。
と言うか実際にハイデマリーのコネだ。
周りの目を気にしてしまうと、逆に投げかけられる視線を辿るようになる。
すると自然とその視線の主に目が行く。
そして、そこまで他者を意識してしまえば、思い出してしまうものがあった。
自分でも驚く。
俺はまだ【
最近、【
少なくとも
多分まだ怪我が癒えてなくて、まとまった収入が入るような
俺なら、
討伐証明部位の審査がちゃんと通ればAランクに昇格するわけだし、大金も手に入るだろう。
貯金も合わせれば、買えていなかった回復薬の備蓄を補える。
もしかすると
……俺はもう【
やっぱり気持ちが良くはないよな。
「……ふへへ」
いかんいかん、コネとはいえ、お世辞とはいえ、曲がりなりにも【
余計なことを考えず、できることをしよう。
*
冒険者ギルドは特殊な建物、というより施設で、地上に受付や依頼の為の大きな建物があり、その地下には
この第一階層までがギルドの管理下にあり、もはや建物の地下一階といった様相である。
第一階層の入り口からは最奥にある転送陣までは舗装された道路が敷かれていて、一つの軍隊が通るくらいはわけない。
受付を終え、いよいよ第一階層に入る。
道路を進んでしばらく、中腹の開けた場所にて、カミラさんは振り返り、全員に号令をかけた。
「総員傾注!」
全員の背筋が伸びる。
【
【
最前線のパーティーは、真っ先に危険に飛び込む責務を背負っているのだ。
かつては奴隷を先遣隊として送り情報収集を押し付けることもあったのだが、誇り高い人々はそのような悪習を許さなかった。
強者こそ危険に身を投じねばならない。
その先に
つまり、今回俺たちは危険な目に遭いに行く。
「これより我々は未知なる階層、第九十八階層への調査へ赴く! 諸君も知っての通り、これは先日までの調査とは一線を画す、正真正銘命懸けの大調査である! 恐れは遺書と共に置いて来たはずだ! 腹を括れ!」
頷いて応える。
「命を捨てよ! そして、その命は栄誉と宝物と、隣にいる仲間を守るために使うのだ! 【
一瞬みんなの視線がカミラさんから離れて、互いを
共通した熱を感じる。
その熱は合わさって、いつの間にか増幅していく。
「意気揚々とした凱旋を! フィールブロンに【
カミラさんが右腕を上に振り上げると、士気が爆発した。
男性陣の野太い雄叫びが
みんなが「うおー!」と叫ぶ。
そして一通り声を出し終わるか終わらないかくらいのタイミングが見計らわれて、カミラさんが一言キリッと放った。
「総員、前進!」
一団が再び歩き出す。
さっきより明らかに歩調に力がある。俺もそれに慌ててついていく。
これが最大手冒険者パーティーの本気か。さすがと言ったところ。
「こういうノリ、苦手でしょ」
「……気付いてもそういうこと言うもんじゃないって、ハイデマリー」
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