第5話竜馬とアメリカ文化

「金持ちは僕たちとは違うなあ」(The rich are different from us)とフィッツジェラルドが言うと、ヘミングウェイは即座に、「ああ、奴らは俺たちより金を持っている」(Yes,they have more money)と言い返した。


英語の勉強も兼ねていたが、竜馬はヘミングウェイの文学にハマった。

「陽はまた昇る」、「武器よさらば」、「誰がために鐘は鳴る」などを読み込んだ。


フィッツジェラルドも同様であった。

「楽園のこちら側」、「グレート・ギャツビー」、「夜はやさし」、「バビロンに帰る」など。


すぐに師匠を作ってしまう性分の竜馬は、シカゴ大学教授、「シカゴ学派」の創始者で、哲学者、教育学者、心理学者、詩人の「碩学」、ジョン・デューイに弟子入りした。


「デューイ先生はアメリカの勝海舟先生じゃ」と周囲に漏らしていた。


「プラグマティズム」

「真理の有用性」

「保証付きの言明可能性」

そして、竜馬のお気に入りの哲学。

「創造的知性」


デューイは教育で創造的知性を養うことが、民主主義の基盤になると考えた。

デューイの哲学、「創造的知性」ではじめて自分の人生を肯定できた竜馬であった。


「為すことによって学ぶ」(Learning by Doing)

デューイの口癖であった。


他にも、「形而上学クラブ」を創設した、チャールズ・サンダース・パース。

プラグマティズムを確立し日本の西田幾多郎とも親交のあった、ウィリアム・ジェイムズなど。

竜馬は19世紀から20世紀のアメリカ哲学の影響を強く受けた。


竜馬の哲学の原点はカール・マルクスの「資本論」にある。哲学や経済学を使ってここまで人類の歴史が読み解けてしまうものかと、竜馬は心底から感動したのであった。のちにフランクリン・ルーズベルトと敢行する社会民主主義的な経済政策、「ニューディール政策」にも少なからず影響を与えた。


デューイは竜馬に言った。

「Ray。大切なのは資本主義か社会主義かという短絡した二項対立ではなく、本当に人々が楽しく豊かに平和に暮らしてゆけるかだ。君やルーズベルトが心の底から人生を楽しんでいれば自然と皆も胸襟を開くものではないかね」


また、竜馬は大衆文化もこよなく愛し、ベースボールのベーブ・ルース、喜劇スターのチャールズ・チャップリン、ジャズ音楽のビリー・ホリデイなどにも夢中になった。

竜馬は、難しいことばかり考えてるようでいて、それなりに二度目の人生を謳歌したのである。

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