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遥翔

1. 想起

 薄暗い階段、足の臭いの立ち込める靴箱、土手の木々を見渡せる渡り廊下、そして、夏の日の大雨の湿っぽくどこか肌寒い感じ……その全てから私はあなたを思い出します。元気にしていますか、心の中で尋ねていた数年前。対して今はどうでしょう。あなたにはもう元気という概念がありません。今更ながらに自責の念にかられます。


 分かっていながら何もできなかった、もう少しだけでもあなたと向き合ってみればよかった、そんな思いで今も雨の日には胸の張り裂けそうな思いをするのです。どの星に祈ればあなたに届くのでしょうか。届いてほしいと願うのは罪なのでしょうか。きっと良くないことなのだろう、そう分かっていてもどこかあなたに届いてほしいと思ってしまうのです。


 そんなあなたへの思いともそろそろ決別しなければならない気がします。最後にあなたへ手紙を書くことをどうか許してください。

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