第53話「作戦会議」

 船倉を探し回って、ベリルが樽の山の奥に見つけたのが火薬部屋だった。そこで、自分の日記帳のページを破り、それを紙包みにして火薬をいただいたのだ。


 なるほど。これがあれば……。でも、どうするか。


(ねえ、ちょっと!)


 黙っているジェイドに詰め寄り、赤髪の少女が声をかける。


 せっかく助けてあげたのに、この少年は、自分たちを無視して足かせも解いてくれないのだ。その目に非難の色が浮かんでいるのも無理はなかった。


(ふたりだけで、コソコソせずに、わたしたちのロープも切ってよ)


 ジェイドは、その少女や興味津々でこっちを見つめる子どもを見やった。


〝いい作戦がある。だが、みんなの協力が必要。話すからしばし待て。ペンとメモ帳を借りる〟


 ジェイドがそう書いて、メモをよこしてきた。ベリルは、右手をつきだすと、親指を立ててみせた。


 ジェイドは、身を低くして子どもたちのもとにもどった。日記帳に殴り書きして、まずは少女に回す。


〝紙で話そう。牢からの脱出作戦を開始する。勇気ある協力者を募る〟


 少女に渡すと、ジェスチャーで〝ほかの子たちにも回して〟と伝える。そして自分は、手術ナイフで少女の足かせを切りはじめた。




「なんだあ?」


 見張りをしている船大工の手下は、奥の部屋から漏れる声に、窓から暗がりをのぞいた。

 子どもたちのすすり泣く声だった。先ほどから、少しずつ大きくなっている。


「なにを泣いてる?うるさいぞ」


 手下は、よろよろと立ちあがると、窓に手をかけて、目を細めて暗がり見やった。


 グスグス。シュンシュン……。


 鼻をすする音や小さく咳き込む音が聞こえる。

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