第39話「子どもたちはどこに?」
「こうなったら一気に船上甲板まで行くぞ」
ジェイドが言うなり、ジャンプして梁にぶら下がった。ベリルも海賊がいないかをたしかめてから、急いで梁の上に登る。
船上甲板にも、あちこちに見回りの海賊船員がいた。ふたりは、ボートとボートの間から様子をうかがう。さいわいなことに、彼らは、船の外を気にしていた。進路と天候に注意を払っているようだった。
ボートには、雨よけの布がかぶせてあり、ふたりは、その布の中に潜り込むと、ボートの中に身をひそめた。ここならば、簡単に見つかりはしないだろう。
ふたりは、同時に息をついて肩の力を抜いた。
ジェイドが、布の隙間から奥を見やる。このまま船尾まで突き進めば、そこには、船長室があるはずだ。
ただ、この見張りの多さでは無理そうだった。
どうやって船長室までたどり着くのか。ジェイドは考えを巡らせていた。
「ねえ、ジェイド?」
「なんだ?」
「捕まってる子どもたちのこと、気にならない?」
「まったくと言っていいほど、気にならないね」
「もう……。どこかに捕まってるはずなのに、ここに来るまでに、子どもたちの姿なんて見なかったじゃん」
「ああ。でも場所なら見当はついてるぜ?」
弟を見て、ジェイドは笑った。
「樽の中に隠れていた時に、大工長が見張ってるって言ってたろ?」
「うん。船医に足を切断されて、それ以来怖がってるとも言っていたね」
「ああ。それで船大工の作業部屋に引きこもってるんだとさ……」
そう言って、ジェイドが意味ありげにベリルを見た。
「そっか。船大工たちが作業をするのは、オーロップデッキ。つまり、あそこのどこかに捕虜牢があるってことか」
「多分な」
そうやってふたりが話している時だった。遠くから、聞こえるはずのない犬の鳴き声が聞こえてきたのだ。
「ワンワンワンワン!」
しきりに吠え立てて、だれかを呼んでいるようだ。
(なんで犬が?)
(下からだ)
ジェイドとベリルは目を見交わした。
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