君と
甘味料
1-2
汗でしっとりと張り付く髪を短く爪を切った指先に絡めて遊んでいました。
てらてらと反射するみたらし団子が髪に張り付きそうだと思い、少し上を向いて食べていたような気がします。
君といる時間は楽しくて、とても気が楽でした。
私の字が汚いのを見ても笑わないのは君だけでした。
幼い頃からこの顔のせいで過剰な期待を受けてきましたが、君からはそんな期待に混じった嫉妬のような何かは見えず、ただ私との時間を楽しんでくれている様に感じました。
とても好きでした、君との時間が。
綺麗に巻いた前髪と完成したメイクはとても固く、君に友人が多い事を物語っているようでした。
そんな中で私の為に放課後残ってくれているこの時間が好きでした。
ふと君の瞳が私の鞄に付いているフリルを着た熊を捕らえたように見えました。
「それ、買ったの?珍しいね。」
捕らえたようでした。
私は、彼氏が出来たことを君に告げられずにいました。
人に優先順位を付けるのは失礼だと思いますが、それにしても、彼氏ができたとなると友人に割ける時間はどうしたって減ると思ったからです。
もしこのまま黙っていたら、君とまだこうして団子を食べていられるのではないかと思いました。
しかし、彼氏に買ってもらったといいました。
君の質問に、確信の色が滲んでいたからです。
言うほかないと思いました。
私は、キーホルダーというものが邪魔で嫌いでした。
彼氏はそれを知らず、君は知っていました。
彼氏との関係がまだ浅いのと、君と恋愛の話をすることが恥ずかしくて少し俯きました。
君なら、もっと私の好きなものを選んでくれると思いました。
当たり前です。
当たり前のことですが、なぜか急に遠く見えた君との繋がりが欲しくなりました。
私が顔を上げた頃には、君は鞄を持って机の上から腰を下ろそうとしていました。
終わってしまった、と思いました。
君にとって私は友達で、彼氏がいないということがその条件のうちの一つだったのかもしれませんでした。
もう君との時間は減っていくのだと、吹き出た汗を肩で拭いました。
君と 甘味料 @kama-boko3
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