ミッシングリンク

ももも

第1話 三角形の石

 幼い頃から野をかけまわるのが好きだった。

 自然はなによりの遊び相手で、虫を捕まえて標本にし、鳥を観察してスケッチをしながら、豊かにのびのびと育った。

 ある日のこと、多くの生き物が取り巻くこの世界がどうして壊れずに成り立っているのか不思議に思い母に尋ねたら

「そうであるようにと、神さまが造られたからよ」

 と教えてもらった。

 神さまは生き物たちを慈悲じひ深く一つ一つ設計され、創世記以来、すべての種は変わることないため、調和ちょうわしているのだと。

 母の話を聞いて真っ先に、神さまは虫が何よりも好きだったに違いないと幼心に思ったものだ。

 虫たちはいろんな姿や形をしており、調べれば調べるほどその多様さに驚かされるからだ。


 珍しい石を探してまわるのも好きだった。

 中でも切り立った土地のそばで見つかった三角形の石は大切な宝物だ。

 すべすべで不思議な形をしており、どこか不思議な魅力を感じていた。

 これは何かと父に尋ねれば、石が生き物を真似たものだといった。

 学校の先生に尋ねれば、稲妻いなずまの欠片だといった。

 古代ローマの博識学者プリニウスの本を読むと、月のない夜に空から降ってきた石だと書かれていた。

 誰に尋ねても、答えはバラバラであった。

 この石にヒモをつけてもらいペンダントにして、暇さえあれば一体これはなんだろうと飽きずによく眺めていた。

 長年の謎であったこの石の正体を知ったのは、大学に入ってからのことだった。

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