第30話
次の日、刑事二人がホテルへ訪ねて来た。ミツルさんの家には誰もおらず、行方を探しているとの事だ。テレビでよく聞く重要参考人として指名手配という奴だろうか。根越とミツルさんは、薬物を使って、少女を洗脳し、売春やアダルトビデオへの斡旋を行って、多額の金銭を得ていた疑いがあるのだそう。百瀬もその運命になっていたのかと思うと、心の底から恐怖を感じた。
そしてツクモ、彼女の失踪はまだ謎が多い。遺体も見つかっていない。あの日記からでは、何もわからない。どこかで生きている可能性はまだある。ミツルさんが知っている。ミツルさんは・・・、そういう人だったのだ。僕は何故それに気付けなかったのだろう。どうして心を許してしまったのだろうか。涙がこぼれ落ちる。
ミツルさんとはもう一度必ず出会う。それは強く感じる。僕はその時おそらく・・・。
父さんとホテルから百瀬の入院している病院へと来た。病室をノックすると百瀬の母親が顔をだした。そして父さんに「この度はご迷惑をおかけしました」と深々と頭を下げた。そして僕の目を見て「志村君。ありがとう。本当にありがとう。ただレイカ。今とても混乱していて人に会える状態じゃないの。もう少し時間が必要なの。わかってくれるわよね」と言った。
僕は病室に目をやった。カーテンが敷かれており、百瀬の様子はわからなかった。
「わかりました」と僕は言い、病室を後にした。
「2.3日ホテルに泊ろう。そしてそのまま夏休みが終わるまで田舎の叔父さんの所へ泊まろう。それからは部屋を変える。いいね?」と父さんは言った。
「うん、ごめん」
「謝る事じゃないんだ。わかるね。何故父さんに相談しなかったんだい?それ程俺は頼りにならないかい?」
「そうじゃないよ」
「これからはなんでも話してくれ。いいね?」
「うん」
「君は優しいから全て自分で抱え込んでしまう。けれど、父さんにとって君より大切なものはないんだ。その気持ちもわかってくれ」
「うん。父さんありがとう。量子力学の本買ってくれて、嬉しかった。俺頑張って科学者になるよ」
「いきなりだな。そうだね。君なら立派な大人になれるよ」
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