33.夕日を背に ◆東京国目郷区・第三コンドミニアム・ぎりしあ荘 TK.MS.tc9360:s33045F
どこにいても、ほのかに混沌の残り香がする。東京国を見渡せば、常に崩壊した建物や土煙が目に映る。救急隊の司る管翼のサイレンと人々の鳴き声が鼓膜にこびりつき、まさに今、この未来都市は阿鼻叫喚地獄となっている。しかしそんなことはお構いなしといった風に、
一行はそんな未来都市の東京で思い思いに真っ赤な本心を語らい合う。それにしても静まり返った国だと、公威が言うその声がずっと遠くまで直進する。
「なんだか、今日は、懐かしいにおいがする」
夕暮れ時に、昔懐かしい団子を口に頬張りながら琳瑚が言う。彼女は一連の出来事を取り込んで、過激な本能を少しばかり丸くしていた。わびさびを実感する心も目覚めさせた彼女は、屋上に皆を集めた。
「しない? 懐かしいにおい」
「なんだそれは」
淡くしらける中、ハベルが尋ねた。この大気を懐かしむのは、琳瑚の鼻腔につながる頭だけだ。
「私の、堂上凛子としての記憶がよみがえったのかもね」
手短に語る。音声言語が果たす役割に、この感情を事細かに伝えるというものは無いのだ。
半ば心を通わすことで、皆一定の心を持ち続けようとしていた。そうでない限り、染まればどうにかなってしまいそうな
「跡部さんのことは、心から、残念でしたね」
「うん。でも、カーネルも」
「お互い様って、こういうことを言うんでしょうか!」
「すず……、うん。そうだね」
「師匠、それで三貴志の皆さんはどないしてはるんです」
「ウラカンとヒュウガは、集中治療中だ」
「それは、ご愁傷様です。みんな傷ついて、混乱に潰されて。俺、仲間が心配で」
初冬の気配に、公威は景色通り文字通り、日の丸を背負う。ハベルは
「ね、そろそろ、行こっか」
クレアが率先して、屋内に誘う。一向に悪い心地はしないのに無性に逃げたい一心で、皆従った。浮遊都市国家という
日はそれで、
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