いつかの夢

水縹❀理緒

いつかの、夢。

☆.。.:*・


外は、珍しく晴れていた。

そして、元気に太陽の下を歩く私の姿。


とても心地がいい。

生まれてこの方、今日のような日に出会ったことがないのだ。

思う存分、堪能しよう

そう思い、天を見上げた。


一筋の、雲が引かれている。

確かあれは……なんだったか。

昔友人が機械を誇らしげに語っていた時に聞いた。

この時期の空は真っ青で、雲一つない晴天がある。

だけど、たまに。

魂の足跡がつくのさ。と。


君も、その足跡を残したのだろうか。

いや、むしろこれが君なのだろうか。


まぁ、考えても仕方の無い事だが。


私は眩しい程の光景に、目を細めた。

そして、息をゆっくりと吐く。


このような幸せも…私には


……昔、よく両親は希望を持ちなさいと言ってきた。

夢や希望があれば、人は生きていけるのよ

幼い私は、そんなものを信じた。

信じなければならなかった。


心を裂く音、飛び散る命、腐っていく同胞。

物心つく前から、目の前に広がる世界は闇ばかりだ。

まだ、友人がいたから、あちらに飲まれることはなかったが

……思えば、幸せだったのかもしれないな。


あの日、手の中にあったひとつの鍵に

希望の眼差しを向けたその瞬間から

私は完全に、飲まれたのだ。


私が歩けば、銃声がなり

私が止まれば、血の池になり

私が振り向けば、死者がこちらを見ている。


太陽なんて、ここにはない。

欠けた月でさえ顔を出さない。


そんな場所さ。


神は気まぐれと言うが

1度傾いた天秤は二度と元には戻らない。

その場からこぼれ落ちれば、すくう事など出来ないのだ。


私はそう思っている。


……過去なんて振り返ったところで変えられる訳でも戻れる訳でもないのに。


ひとつ、息を吐いた



これは泡沫だ。

未だに焦がれ続けている夢。

私はとうに知っている。


ならば何故、今更幸せをみるのか


そんなもの


答えはひとつだろう。



【終】

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いつかの夢 水縹❀理緒 @riorayuuuuuru071

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