12 桔梗と撫子

 




 その声を、汰一は知っていた。


 聞いた瞬間、学校の中庭の花壇が目に浮かんだ。

 一緒に育てた花の香りが蘇った。


 悲しいくらいに、耳に馴染みのある声。

 だから、信じたくなかった。

 他人の空似であってほしかった。


 しかし……

 振り向いた先にいたのは、予想通りの人物だった。



 ハーフツインにしたミディアムヘア。

 垂れ目がちな瞳。

 小柄な身体に、撫子なでしこの柄があしらわれた浴衣を纏っている。



 その姿を目にしてもなお、汰一は信じられない気持ちで奥歯を噛み締める。

 そして……




「………………裏坂……ッ」




 目の前にいる少女の名を、苦々しく呼んだ。


 美化委員の後輩、裏坂未亜。

 その姿は間違いなく彼女そのものだが、先ほどのセリフやこの"境界"へ自分たちを招き入れたこと、何より表情や雰囲気の違いから、汰一は目の前にいるのがであることを確信していた。



「裏坂さん……どうしてここに……?」



 汰一の後ろで蝶梨が困惑の声を上げる。

 未亜の姿をしたは、火光かぎろいのような揺らめきを纏いながらニコッと微笑む。




「うふふ。こんばんは、先輩」

「……違う。お前は裏坂じゃない」



 蝶梨を背に隠すように立ち塞がり、汰一が低く言う。



 まさか"堕ちた神"が、忠克ではなく裏坂に憑依していたとは……

 いや、まだこいつが"堕ちた神"だと決まったわけではない。

 わかっているのは……

 蝶梨の命を狙っている、ということだけだ。



 汰一の鋭い視線を、未亜の姿をしたは鼻で笑い飛ばす。



「いいや、あたしは未亜ちゃんそのものだよ。だって、未亜ちゃんの"願い"から生まれたんだから」

「裏坂の、願い……?」

「そう。未亜ちゃんはね、あんたのことも、彩岐蝶梨のことも、憎くて憎くて堪らないんだ。だから殺して、"願い"を叶えてあげるの!」



 そう叫ぶのと同時に、"未亜"は勢い良く右手を振るう。

 すると、"未亜"が纏っている浴衣の生地が、足元からシュルシュルとほつれ始めた。


 ほつれた糸は"未亜"の目の前で一つに集まり、ぐちゃぐちゃと絡まりながら黒い塊を形成していく。



「何が、起きているの……?」



 汰一の背後で、怯えた声を上げる蝶梨。

 "未亜"の浴衣の裾はみるみる内に短くなり、彼女の太ももが露わになるまでほつれたところで、糸がぷつんと切れた。


 黒い糸の塊は、絡まりながら凝縮し続け……

 一つの球体になったかと思うと、そのまま膨張し始めた。

 気体のように、液体のように、何かを形作りながら大きくなる塊。

 やがて、それは……


 汰一の背丈より二回りは大きい、巨大な獣と成った。


 牛のように太い二本の角。

 虎のように鋭い牙と爪。

 ひぐまのように巨大な身体。

 真っ黒な胴体の腹の部分には、浴衣と同じ撫子の花の模様が浮かび上がっている。


 そんな、猛獣の凶悪な部分だけを集めたような禍々まがまがしいバケモノが、汰一の前に立ち塞がった。



「汰一くん、これって……」



 蝶梨は震えながら汰一の背中にしがみつく。

 彼女も、撫子の模様を見て気付いたようだ。

 二度に渡り汰一たちを襲った、犬のような"黒い獣"……

 あの三匹の身体にも、同じ模様があった。


 これで確定した。

 あの"獣"たちを放ったのは、目の前にいる"偽物の未亜"だ。



「(やはり、こいつが黒幕……)」



 黒く巨大なバケモノから距離を取るように汰一が後退すると、"未亜"はニヤリと笑う。



「あはは、今までのようには逃げられないよ。そのために境界ここへ閉じ込めたんだから」

「何なんだ、お前……どうして蝶梨を狙う?」

「だから、あたしは未亜ちゃんの"願い"から生まれたモノ。その"願い"っていうのが、あんたと彩岐蝶梨に消えてもらうことなの」

「嘘を言うな。裏坂がそんなことを願うわけがない!」

「はぁ? あんた本気でわかってないの? 未亜ちゃんがこんな"願い"を抱いたのは、全部あんたのせいだよ」

「俺のせい……?」

「そう。だって未亜ちゃんは…………あんたに惚れていたんだから」



 そのセリフに、汰一は息を止め、驚愕する。

 反応を見た"未亜"は「あはっ」と楽しげな声を上げ、さらに続ける。



「その表情カオ、どうやら本当に気付いていなかったみたいだね。自分の鈍感さを呪うといい。そのせいで自分も、大事な彼女も、今から死ぬんだから!」



 直後、"黒いバケモノ"がゆっくりと汰一たちに向かって歩き始めた。

 怯える蝶梨の手を引き、汰一は走り始める。



「カマイタチ、頼む!」



 縋る思いで叫ぶと、汰一の首元からぶわっと風が溢れ、式神・カマイタチが細長い身体をくねらせながら現れた。

 此岸しがんでは見えないが、ここは此岸しがん彼岸ひがんの狭間。カマイタチの姿も目視することが出来る。

 代わりに、



「たっ、汰一くん! また何か出てきたよ?!」



 蝶梨の目にも映るため、困惑させてしまうのが難点だ。

 驚き足を止めそうになる蝶梨に、汰一はすぐにフォローを入れる。



「大丈夫、コイツは味方だ!」

「み、味方? 汰一くん、あなた一体……」



 戸惑いの眼差しを向ける蝶梨。

 しかし、詳しく説明している時間はない。

 汰一は蝶梨の手を引いたまま、近付いて来る"バケモノ"から逃げるように走り続ける。



「(おい、柴崎! 黒幕が現れたぞ! なんとかしろ!!)」



 川砂利を鳴らしながら、浴衣の懐に入れた御守りに向かって念じる。



「(近くにいるんだろ?! 早く裏坂を正気に戻せ! このままだと蝶梨が殺される!!)」



 汰一の背後では、カマイタチが目にも留まらぬ速さで"バケモノ"を攻撃し続けている。

 が、"バケモノ"の進行が止まる気配はない。カマイタチが喰った箇所が、すぐに再生しているようなのだ。

 やはりあの犬のような"獣"の時同様、カマイタチの攻撃は効かない。

 ならばもう……柴崎かみの力に頼るしかないのだ。


 こんな風に呼びかけて、すぐに応えが返ってきた試しがないことは汰一も承知しているが……



「(たまにはすぐに助けに来やがれ、このチャラ神!!)」



 渾身の想いを込めて、胸の中で叫ぶ。

 すると、




『あーもー聞こえてるよ。てゆかその「チャラ神」っていうのやめてくんない? まじ無礼千万』




 ……という緊張感のない声が、脳内に返ってくる。

 汰一は思わず足を止めそうになるが、走り続けたまま声に集中する。



「(柴崎! 早く来い! "堕ちた神"に襲われてる!)」

『いやいや、汰一クン。そいつは"堕ちた神"じゃないよ』

「(なっ……じゃあ一体……)」

『裏坂未亜の浴衣から生まれた怨念──"付喪神つくものかみ"だ』



 付喪神つくものかみ

 此岸にある物体に、人間の"念"が宿り生まれる存在。


『純粋に持ち主の願いを叶えようとするのが付喪神の本質だからね。その願いというのがの不幸を望むものなら、その誰かにとっては「悪さ」になるだろうってだけの話。付喪神自身に悪意はないはずだよ』


 汰一は、以前柴崎に聞かされた話を思い出す。



「(つまり……裏坂が本当に俺や蝶梨を恨んで、こいつを生み出したってことか?)」

『まぁ、そうなるね』



 柴崎の淡々とした答えに、汰一は胸が締め付けられる。

 知らなかった。まさか未亜が、そんな想いを抱いていたとは……


 思い返せば、ここ最近彼女は花壇に姿を見せていなかった。

 期末試験や忠克への疑念、蝶梨と過ごす日常に気を取られ、気付くことができなかった。


 ……いや、気付いたところで、きっとできることは限られていた。

 だって、彼女の気持ちに応えることは……できないのだから。



「(……どうすれば、止められる?)」



 汰一は、喉を鳴らしながら柴崎に尋ねる。



「(あの裏坂の姿をした奴を倒せばいいのか? 裏坂への影響は?)」

『大丈夫。あれは裏坂未亜の姿を真似た思念体だから、斬ったところで本人の身体が傷付くわけではないよ。本人に影響があるとしたら精神面だけど、キミにとっても都合が良いもののはずだ』

「(……どういう意味だ?)」

『付喪神を斬るってことは、キミや彩岐蝶梨への強い想いを断ち切るってこと。つまり、キミへの恋心も、それに付随する悲しみや憎しみも、綺麗さっぱりなくなる』

「(それって……裏坂の中にある感情を、勝手に消すってことか?)」

『そうだよ』



 その言葉に、汰一は動揺する。


 あの付喪神を斬れば、もう黒い"獣"や"バケモノ"に襲われることはなくなる。

 しかし、同時に……

 未亜の中の大きな感情を、強制的に消し去ることになる。


 確かに、いつまでも悲しみや憎しみに囚われ続けるのは、未亜にとっても辛いことだろう。

 だが、未亜の感情は未亜のものだ。彼女自身がその感情と向き合い、ゆっくりと消化していくべきもののはずだ。

 それを……勝手に断ち切ってしまうなんて。



『……何を迷っているの?』



 戸惑う汰一に、柴崎が問いかける。




『キミにとって、一番大切なものは何? 一番護りたいものは何? あれもこれも大切だから、全て同じように幸せにしたいだなんて、そんな綺麗事は通用しないよ。特に、神の世界ではね』




 柴崎の言葉を、汰一は冷酷だと思う。

 しかし同時に、その通りだと納得もする。

 いつか艿那になが言っていた、あの言葉と同じだったから。


『誰かの幸福は、誰かの不幸じゃ。"福神ふくのかみ"と言えど万人に等しく幸せを与えることは不可能。この世は天秤じゃよ、天秤』


 誰かの幸福は、誰かの不幸。

 それが、今なら痛い程わかる。


 だって、誰かを不幸にしたとしても、自分自身が不幸になろうとも、幸福にしたい相手はただ一人。

 蝶梨だけ。彼女の幸せが、自分にとって一番大切なことだから。



「(……わかった。でも、斬ろうにもカマイタチじゃ歯が立たない。お前に何とかしてもらわないと……『ここからは神の領分だ』って、前にも言っていたよな?)」



 そう。汰一の力ではどうにもならないことは、既に実証済みだ。

 だからこそ、柴崎に助けを求めているのだが……



「(早く来てくれ。逃げるのもそろそろ限界だ。蝶梨の足がもたない)」



 と、汰一は走りながら蝶梨の様子を確認する。

 汰一に手を引かれ懸命に走ってはいるが、慣れない下駄で不安定な砂利の上を走っているため痛むのだろう、足が今にももつれそうだった。


 迫る"バケモノ"にカマイタチが攻撃をし続けてはいるが、やはり大した足止めにはなっていない。

 砂利と雑草が広がるだけの河原には、武器になりそうなものも落ちていない。今までのように剣を模して戦うことは不可能だ。

 柴崎の……神の力に頼るしかない。



 と、その時。

 走っていた汰一の身体が、見えない何かにぶつかった。

 突然止まった汰一につられ、蝶梨も足を止める。



「た、汰一くん、どうしたの?」



 心配そうに見つめる蝶梨。

 汰一は強打した顔面の痛みに涙を浮かべながら、何が起きたのかと手を伸ばす。

 すると、目の前の景色は続いているというのに、そこには壁のような感触があった。目には見えないが、間違いなくそこに障壁がある。


 先ほど、未亜の姿をした"付喪神"が言っていた。

 境界ここへ閉じ込めたから、逃げることはできないと。

 恐らく、あの"付喪神"が作り出した境界の果てがここなのだろう。


 つまりは……壁際に追い詰められたということ。


 振り返ると、"黒いバケモノ"は巨大な図体を揺らしながらゆっくりと、しかし確実に汰一たちに迫っていた。

 カマイタチが旋風を巻き起こしながら何度も飛びかかっているが、やはり効果はない。



「(柴崎、早く……早く何とかしてくれ!)」



 額から汗を流し、汰一が胸中で叫ぶ。

 が……

 柴崎からの返答は、思いもしないものだった。




『そう。"厄"を祓うことに特化した式神は、単体では付喪神に太刀打ちできない。付喪神は、此岸しがんに根を張る存在だからね。斬るには神の力が必要だ。だから──汰一クン。キミが、それをやるんだよ』




 その言葉の意味が、汰一にはわからなかった。

 矛盾している。神の力が必要だと言っておきながら、何故人間である自分にやらせようとしている?


 柴崎に聞き返そうとしたその時、"バケモノ"が振るった鋭い爪によりカマイタチが弾き飛ばされた。

 地面に叩き付けられ、「キュウッ!」と響くカマイタチの悲鳴。汰一は駆け寄り、その細い身体を抱き上げる。



「カマイタチ! 大丈夫か?!」



 カマイタチはガクガクと震えながらも、再び立ち上がろうとしている。汰一たちが逃げている間にも何度か爪でやられたのだろう、身体中傷だらけだった。



「あはっ。追いついた」



 "バケモノ"の背後から現れた"付喪神"が、楽しげに言う。



「追いかけっこはおしまいよ。さぁ、何もかも終わらせて……未亜ちゃんの願いを叶えましょう」



 "付喪神"のその言葉に従うように、"バケモノ"が汰一たちの方へのしのしと向かって来る。



「汰一くん……っ」



 蝶梨の恐怖に染まった声。


 どうする?

 柴崎は助けてくれない。

 カマイタチは傷だらけで、武器になりそうなものもない。

 今の自分にできることがあるとすれば……それは…………


 汰一は"バケモノ"の前に立ち塞がり、蝶梨を護るように両手を広げると、



「蝶梨には手を出すな! 殺るなら俺だけにしろ!!」



 そう、力の限り叫んだ。


 助けもない。戦う力もない。

 それでも蝶梨を護るには……

 もう、自分の命を引き換えにするしかなかった。



「裏坂の憎しみの原因は俺のはずだ! だから……俺を殺したら、蝶梨は解放してくれ!」

「そんなっ……汰一くん駄目ぇっ!!」



 蝶梨の悲鳴が、閉鎖された境界に響く。

 汰一はそれには応えず、未亜の姿を借りた"付喪神"を真っ直ぐに見つめる。


 真面目で、責任感が強くて。歯に絹着せぬ物言いをして。

 虫が苦手なのに、めげずに花壇の手入れをしてくれた、大事な後輩。


 そんな未亜が生み出した存在なら、真摯に話せば耳を傾けてくれるのではと、信じたかった。

 しかし……

 未亜の顔をした"付喪神"は、汰一の言葉を鼻で笑い、



「ハッ。そういうヒーロー気取り、辞めてもらえる? 虫唾が走るから」



 ひどく冷たい声で言った、直後……

 "バケモノ"が腕を振り上げ、汰一の身体を殴り飛ばした。



「がは……ッ!」



 身を翻す間もなく、振り下された鋭利な爪が汰一の胸を切り裂く。

 色のない世界で真っ黒な血飛沫を上げながら、汰一は後方へと吹き飛ばされ、地面に叩き付けられた。



「ぐ……っ」



 着地と同時に頭を打ち、脳が揺れる。

 切り裂かれた胸部は痛みを通り越し、熱いとさえ感じる。



「汰一くん……っ!!」



 倒れ込む汰一の元に蝶梨が駆け寄ってくる。

 そこに、"付喪神"が砂利を鳴らしながらゆっくりと近付き、



「『俺を殺したら蝶梨は解放してくれ』? そんなことで、未亜ちゃんが満足するとでも思っているの?」



 倒れ込む汰一を、凍てついた視線で見下ろす。



「未亜ちゃんはねぇ、今日のお祭りをずうっと楽しみにしていたの。おばあちゃんの代から受け継いだ浴衣あたしを着て、あんたに見せることを、ずっとずっと楽しみにしていたのよ。その気持ちを粉々にされたんだもの、あんたの命だけで済むはずがないでしょ?」



 そのまま、下駄を履いた足で汰一の頭をガッと蹴り飛ばす。

 目の前で汰一の口から血が飛ぶのを見て、蝶梨が声にならない悲鳴を上げる。



「蝶梨……逃げろ……っ」



 汰一は朦朧としながらも、振り絞るように言う。

 が、"付喪神"はそれをすぐに否定する。



「馬鹿ね、逃げられないと何度言ったらわかるの? これで、彩岐先輩も終わりよ」



 その言葉と同時に、"バケモノ"が蝶梨へと迫り……

 巨大な手で、彼女の身体を捕まえた。



「きゃあぁっ!」

「蝶梨ィ……っ!!」



 激痛に耐えながら見上げると……"バケモノ"が蝶梨の首を持ち上げ、ギリギリと締め付けていた。

 白い満月を背景に、彼女の綺麗な横顔が、苦痛に歪んでいく。



「やめろ…………やめろ……!!」



 怒りで、恐怖で、身体が震える。



 本当に、どうしようもないのか?

 どうして柴崎は助けないんだ? "エンシ"を護るんじゃなかったのか?

 わからない。一体俺に、どうしろというんだ?



「……た……いち……く……」



 蝶梨が、苦しげに手を伸ばす。

 助けなきゃ。早く……早く…………!!




『──そうそう。早くしないと本当に死んじゃうよ?』




 焦る汰一の脳裏に、柴崎の声が響く。

 汰一は目を見開き、声に出して訴える。



「柴崎テメェ……見ていないで助けろよ!!」

『駄目だよ。これはキミに対するなんだ。キミが乗り越えなきゃならない』

「試験……? 何をわけのわからないことを……!!」

『思い出して。自分が何者なのか。キミは、カマイタチを武器化するための「躍如ヤクジョ祝詞ノリト」をっているはずだ』

躍如ヤクジョ祝詞ノリト……?」

『仕方ない、もう少しだけヒントをあげよう。交通事故に遭ったあの日、キミは、失った意識の中でに逢ったね?』



 その言葉に。

 汰一の心臓が、急激に加速し始める。



『そうそう。それから? その男はなんて言った? キミはそいつを、どうしたの? 早く思い出ないと…………彼女、キミ以外のヤツに殺されちゃうよ?』




 ──ドクンッ。



 一際大きく脈打つ鼓動。

 強烈な既視感に襲われ、目眩がする。





 ……あぁ、そうだ。

 あの時も、思ったんだ。


 嫌だ。奪われたくない。

 蝶梨は誰にも殺させない、と。



 焦燥と、欲望と、愛情と……その奥。もっと向こうだ。


 思い出せ。思い出せ。

 誰に奪われたくなかった?

 何を犠牲にした?




 ────あぁ、そうだ。あの時、俺は…………






 蝶梨を護るために、人間を辞めたんだ。





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