世にも陳腐な物語
羽弦トリス
第1話秘密戦隊・ゴレンジャイ
一台のバイクが轟音をたてながら、夜中の国道を突っ走る。そう、彼は秘密戦隊・ゴレンジャイのリーダー赤レンジャイである。
今日も、ウォシュレット仮面を倒し現地解散、直行直帰なのだ。途中、ガソリンスタンドへ寄り、満タンにしてレシート兼領収書を財布に入れ、後でゴレンジャイ事務局に提出して、ガソリン代を返してもらうのだ。
再び、国道を突っ走る。
ウゥ~ウゥ~、『前のバイクの方、左に寄って止まりなさい』
パトカーに赤レンジャイは停められた。
「いや~、お兄さんスピード出てたね~」
警察官が近付く。赤レンジャイはマスクを装着したままだ。
「お兄さん、ここの制限速度知ってる?60キロだよ。お巡りさん計測したら、80は出てたよ。あれっ?お兄さん、ヘルメットは?」
「……このマスクかぶってますけど」
赤レンジャイはしぶしぶ答える。
「このマスク?ちょっと、脱いでみな?」
「はい」
赤レンジャイはマスクを脱いだ。そこには、マスクに合わない年齢のじいさんがバイクに股がっていた。
「こりゃ、ヘルメットじゃねえ~よ。よく見りゃ、いい歳こいて親父さんいくつなの?」
「え~と、ゴレンジャイが放送していたのは、1975年だからあの時24くらいだったから、今年70歳ですね」
「70歳?おじさん、このバイク改造車か?」
「いや、昔っから戦隊モノは改造車なんですよ」
「ちょっと、おじさんに聞きたい事あるから」
「名前は?」
「知りませんか?」
「私が知ってる訳ないじゃいか!」
「赤レンジャイです」
「は?」
「だから、赤レンジャイです」
「名字は?」
「名字?……赤です」
「はい、アカね。名前は?」
「レンジャイですかね」
「あ、おたく、アカ・れんじゃいさん?」
「違います。赤レンジャイです」
「だから、名字がアカだろ。名前がれんじゃいなんだから、アカ・れんじゃいさんでいいじゃね~か!で、職業は?」
「一応、正義の味方ですが……」
「正義の味方~?」
「じゃ、自由業でいいです」
「で、住所は?」
「じ、住所は秘密戦隊ですから、秘密です」
「秘密?」
「はい」
「ちょっと、おじさん、私にハーッしてみな?」
ハーッ
「うわっ、飲んでんな?」
「今日は久しぶり、ウォシュレット仮面を倒したんでね」
「お前、ノーヘル、改造車、スピード違反、免許証不携帯、飲酒運転、現行犯逮捕だ、逮捕!」
「まだ、赤十字総統を倒してませんが……」
「うるせ~、午前2時15分。現行犯逮捕!」
皆様は、飲酒運転なさらぬように。
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