第15話
それから他愛もない話をしていると、すぐに私たちも試験会場に呼ばれた。
案内役の職員さんに着いていく。
結界を通り試験会場の中に入ると、外側の観客席が見えなくなっていた。不思議に思い職員さんに質問すると、観客席が見えると集中できない場合があるので、外側からだけ一方的に見えるようになっているのだそうだ。
幾重にも重なった結界の中にマジックミラーという結界があるのだという。
以前のキリム様騒動のときに、最初観客席にいてもバレていなかったのはそういうことだったのかと今更納得した。
各試験場所には説明役の職員さんがいて、その人から説明を受けて試験をするようだ。
グループによって回る順番は違うようだが、最後が自由実技試験であることは同じとのことだった。
自由実技試験は、使える魔術を自由に披露する試験だ。
初級魔術師になるにはどうすれば良いかをアンさんたちに聞いたら、この自由実技試験で初級魔術が使いこなせることを示せば良いとのことだった。
聞いたときにアンさんたちが苦笑していたのが気になるが。
ちなみに自由実技試験を必ず最後にするのは、魔力を使い果たしても良いようにとの配慮らしい。毎回魔力を使い過ぎて倒れる人が続出するのだそうだ。
私たちのグループは魔術式の展開速度の試験から始まり、魔術のキャンセルが適切に行えるかの試験、魔術精度や展開速度を測るための的あて試験などを順々にこなしていった。
魔術式の展開速度の試験は良い結果が出せたようで職員さんが驚いていたが、その後の試験は特に良い悪いという感じではなさそうだった。
強いて言うなら的あて試験は結構頑張れたのではないかと思う。アンさんたちよりもそこそこ高いスコアを出せた。
最後の自由実技試験の前に、結果に偏りがあると言われて再試験を受けることになったことだけが少し面倒だった。
アンさんたちは先に自由実技試験の試験所に行き、私は案内役だった人とはまた違う職員さんに連れられて一通り同じ試験を受けさせられた。
今度はグループではなく一人での巡回だったのですぐ終わったとは言え、単純に同じ内容を二回もやるのは精神的に疲れた。
職員はどうにも腑に落ちない様子だったが、最終的には納得してもらえて、自由実技試験に進むことを許された。
自由実技試験の試験所に着くとまだアンさんたちは試験前であった。
試験官さんが多く待機していて同時に何人も受けられるとは言え、時間が一番かかる試験だ。試験を受けるまで結構待たされるようである。
職員側の不手際だからと元いたグループと合流することを許してもらえたので、アンさんたちのもとに合流する。
時間は待たされるが、その分他の魔術師たちの魔術を見ることができるから、案外飽きはしないようだ。
アンさんたちも口々に「あの魔術かっこいい!」「あれなんの魔術だろう」「ああ、あれはですね」などと見物を楽しんでいるようだった。
自分の試験後も残って見学することが可能で、観客席にはそこそこの人数がいるそうだ。
他人の魔術を見て学ぼうとする人だけでなく、スカウトのために冒険者パーティや貴族の使いがいることもあるらしい。
そう聞くと、なんだか少し緊張する。
「みなさんお疲れ様です」
「あ、シスタちゃんだ! お疲れ様。どうだった?」
「特に問題はなかったようです。二回も試験をやらされて疲れました」
「あちゃー、ドンマイだよ!」
アンさんたちと話しているとほっこり和む。この試験の間だけの付き合いかもしれないが、良い人たちと巡り会えて良かったと思う。
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