アンチアナザー
hiraku
プロローグ『アンチアナザー』
強い日差しが地面のタイルに反射し、キラキラと人々を照らす。
中世ヨーロッパ風の街並みが広がり、八百屋の威勢のいい声が街行く人々の喧騒に紛れる。
人々の容姿はアジア系からヨーロッパ系、金髪から黒髪等様々な人種が入り混じっている。
服も洋服や和服、白衣やスーツと数えようとしたらキリがない程だ。
「あの、すみません」
くしゃくしゃのTシャツを着た挙動不審な少年が八百屋の男性に声をかけた。
年齢は15歳程度だろうか。
「なんだ兄ちゃん?」
見るからに怪しい雰囲気を漂わせる少年に、万引きでもするんじゃないかと警戒しながら男性は返答した。
「このお野菜っていくらですか?」
「え、あー...」
あまりに普通すぎる質問に虚を突かれたが、同じく普通に値段を教える。
「あ、なるほど。ありがとうございます」
少年はそれだけ聞くと、買うこともなくその場を離れ、人混みの中に姿を消していった。
様々な人種がいる街だが、その中でも少年は不思議と異質な雰囲気を漂わせていた。
まるでこれから世界を大きく変える存在であるような、そんな予感は期待しすぎなものだろうか。
『さぁ、選び、そして見せて下さい。
あなたの素晴らしい生を、あなたの貪欲なる欲求を。
私はその全てをあなたに与えましょう』
何者かの声が、頭に響いた。
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