第四世界:クロームワールドの決闘者
《封印の世界:色彩の間》
「お前は自分が何をしようとしているのか分かっているのか?」
「ああ。封印を解き、皆を自由にする!」
「馬鹿な真似はよせ。封印を解けばカードにされたエルフ、ドワーフ、そして数々のモンスターが解き放たれるのだぞ」
かつてこの世界には様々な種族と生き物が存在していた。
ヒトは様々な争いに巻き込まれながら、そして手を取り合いながら生きてきた。
だがそこに一人の異才が誕生した。
それは力を持つ者、魔術そのものをカードに封印するという摂理を定めた。
この摂理により多くのものがカードにされ、ヒトに使役されることとなった。
簡単に言えばカードゲーム的な世界である。
しかしヒトはこのカードによって簡単に力を振るえるようにになり、世は混沌を究めた。
これを何とかする為に俺はこの封印という摂理を壊す為にこの場所に来たのだ。
「考え直せ。奴らの力を自由に使えるからこそ人類が繁栄できるのだぞ」
「他種族を搾取するだけの反映が悪いとまでは言わない、それで救われる人もいるだろう。だが、このままヒトが力に溺れればその力でヒトは滅ぶ! だから良き隣人となる彼らを助けないといけないんだ!」
そう、俺はこれまでの旅でカードにされた仲間と過ごしてきた。
カードにされたといっても彼らの記憶や感情、そして育んだ絆がそれを確信させた。
ヒトだけではダメなのだと。
この世界はエルフ、ドワーフ、ゴブリン、そしてモンスターがいてこそ回るのだと。
巡回しない世界は、淀み腐る未来しか訪れないのだ。
「子供の理想だな。貴様はカードにする価値もない、ここで処分してくれる」
「脅威あるものを全て封じれば世界が平和になると思い込んでいるお前の考えこそ子供の理想だ」
お互いに話が平行線であることが確認できた。
ならば最後の手段だ。
「至高のカードを見せてやろう。グローイング!」
「仲間の数が俺の力だ。グローイング!」
俺と魔王は同時に詠唱し、40枚のカードが格納されたガントレットを召喚して装着する。
「デッキパワーは俺の方が低い、こっちが先攻だ!」
デッキパワーというのは簡単に言えばカードの持つ力を数値化したものだ。
これが多ければ多いほどカードの力を展開する時間が必要になる。
必然、デッキパワーが少ない方が先攻となり、多い方が後攻となる。
「俺のカード! スペルカード二枚をセットし、”樽爆ゴブリン”を召喚! 特殊効果で俺のHPは減るが互いの手札を柩に入れて同じ枚数をドロー!」
「面白いカードだ。しかしそんなものをいきなり使うということは、余程手札が悪かったようだな」
こうしてお互いの手札がリセットされる。
最初と違うことといえば、スペルカードが二枚俺の場にあることだろうか。
デッキにあるカードはあと35枚。
「俺のターンはまだ終わってない! 手札からスペルカード”生贄の祭壇”を使用! 手札にある”エルフの侵略者”を生贄にする。”生贄の祭壇”の効果でお前のデッキのカードを2枚柩に送る。そして”エルフの侵略者”が場から除外された効果で”祝福のエルフ”をデッキから場に召喚!」
「……何をするつもりだ?」
悪いが俺はお前と決闘するつもりはない。
俺はソリティアがしたいんだ。
残り33枚。
「スペルカード”欲の坩堝”を使用、お互いにデッキからカードを5枚ドロー。そして俺は”祝福のエルフ”の特殊効果を使用、柩にある”樽爆ゴブリン”を手札に戻し、再び場に展開する。そして手札にあるスペルカード”接ぎ木技術”を使用、”樽爆ゴブリン”を増やして一匹だけ特殊効果を発動。お互いの手札を柩に送り、同じ枚数をドロー!」
これで魔王は手札10枚を柩に送り、同じ数だけデッキからドローすることになる。
残り23枚。
「そして場に出ている”樽爆ゴブリン”の特殊効果を発動。もう一度10枚ドローだ。さらに俺は場に出しておいたスペルカード”死者の足引き”を使用、俺の柩にあるカードを全て除外し、お前のデッキにあるカードを10枚柩に送る!」
魔王のデッキは“樽爆ゴブリン”で13枚になり、さらにスペルカード”死者の足引き”で3枚にまで減った。
ちなみにデッキにあるカードが尽きると”オーバーロード”が発生し、デッキパワーがそのままダメージフィードバックしてデッキマスターは死ぬ。
「そして俺は今手札にスペルカード”生贄の祭壇”があり、お前の手札をさらに2枚削れる。何が言いたいか分かるか?」
「………サレンダー(降参)は、認めてもらえるのかな?」
「すまない、異世界語は分からないんだ。それじゃあ”生贄の祭壇”使って”全肯定ゴブリン”を除外。お前のデッキから2枚カードを柩に送りターンエンド!」
残りカード1枚。
ドローすれば死ぬが、ターン開始時に必ず引く誓約があるので回避できない。
「本当なら一度もターンをまわさずに倒すこともできたが、このカードというシステムを使ったお前に敬意を払ってターンを回すことにした。さぁ最後のカードをドローしろ」
「こ、こんな! こんな作戦で余が! 余が死ぬの……ぐあああああああああああ!!」
魔王は抗おうとしたが、自らが定めたルールに逆らえなかった。
魔王の断末魔が響き渡り、それが消えてからカードにヒビが入る。
瞬間、激しい光がカードから発せられ、周囲にはカードとなっていた仲間達が元の姿に戻っていた。
「おぉ、勇者よ。よくぞ魔王を倒し我らを解放してくれた。礼を言おう」
カードの封印から解かれたエルフの女王が俺に感謝の言葉を述べる。
それを皮切りに次々と仲間達がこちらに集まってきた。
「感謝する、勇者。君と共に戦えたことが最大の誉れだ」
ホビットの姫騎士も騎士の礼をする。
戦士たる彼女にここまで褒められるのもくすぐったい気持ちがある。
「ヒトの子よ、案ずるな。確かに魔王は我らを封じた。それ故に我らがヒトに牙を向けぬ心配だろうが、ヒトであるお主が我らを救ったのだ。最大限の配慮を約束しよう」
本来ならばヒトのことなど歯牙にもかけないドラゴニュートの魔道師すら、俺のことを認めてくれている。
よかった、俺のやったことは間違いじゃなかったんだ……。
「さて、ずっとここに滞在するわけにもいきません。我らの故郷に帰りましょう。勇者様にはこの世の贅を尽くした歓待を……」
そう言ってエルフの女王が俺の側に寄る。
いい匂いがして思わず心拍数が上ってしまう。
「む、そういう手段でくるのであれば私も」
ホビットの姫騎士さんがさらにこちらに寄って腕組みをしてくる。
小さいながらも弾力がありさらに興奮してきた。
ここに来るまで約25日、俺が死ぬまでまだまだ時間がある。
見たか神様、俺はやり遂げたぞ!
ようやく…俺はようやくこの異世界でハーレムを堪能できるんだ!
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