第21話 玉手箱

かぐや姫との約束をなんとしてでも果たさなければならない。

きっと彼女は空から俺のことを見ている。

かっこいい姿を見せてやらねば。


浜辺を歩いていくとやはり、いた。

浦島さんだ。

「今日は全然釣れないなー。」

なんだか不漁みたいだ。

「浦島太郎さん、こんにちは。」

「おお、この間の亀くん。

 礼は必要ないと言ったではないか。」

「お礼ではありません。

 謝罪に参りました。

 私、実は赤ずきんを食べたオオカミなのです。」

「いやいやなーにを寝ぼけたことを言っておる、正真正銘あなたは亀だ。」

「私は亀に化けたオオカミなのです。

 赤ずきんたちに私のお腹の中に石を詰められ、湖に沈められてしまいました。

 湖に沈むと、石が甲羅になり、私は、亀になっていました。」

「そんなおとぎ話は聞いたことないがな。」

「私も正直とても驚きました。

 そこで、私を助けていただいた浦島さんに玉手箱を持ってきました。

 お詫びの品です。どうかお受け取りください。」

「どうせあれだろ?

 開けたら年老いてしまうやつだろ?

 それで私は散々痛い目にあってきた。

 玉手箱を開けるたび、整形を繰り返し、やっとのことで手に入れたこの美貌。

 美容外科の院長にも次やったら顔面崩壊もあり得るかもしれない、と言われている。

 今回ばかりは受け取らないぞ。」

「それは竜宮城でもらった玉手箱ですよね?

 これは赤ずきんのオオカミからなので心配ありません。

 さあ、どうぞ。」

「じゃあ受け取っておこうかな。

 ありがとう。」

浦島さんは戸惑いつつも受け取ってくれた。

「ぜひ今お開けください。」

「わかった。」

浦島さんが玉手箱を開けた。

正直俺も何が入っているかは知らない。

開けると煙があたりを立ち込めた。

俺と浦島さんは咳き込み始めた。

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