不死身の彼の裏の世界

第1話

「実は僕、不死身なんだ。」

そう微笑みながら静かに伝える君は今にも溶けてしまいそうだった。

ある週末に起きた高速道路での交通事故。タクシーとトラックの衝突によるものだった。報道ではタクシードライバーの死亡。トラックの運転手は軽傷との事だった。ニュースでは運転手の二名についてのみ語られていたが、当然タクシーには乗客がいた。血痕のみを残して消えた不可解な事故現場だったため国はマスコミに圧力をかけた。それ以降情報は出回らなかった。

「なあ叶。これからどこ行くんだ？」

「さあどこだろうね。天国かも？」

叶は僅かな笑みを浮かべながら街を歩く。街の喧騒を気にすることなく、多くの歩行者に紛れながら小さな翼を生やした少年は言う。

「そろそろこの世界も潮時かな」