第59話 決闘システムとクラン1
十傑会議が終わると、俺たちはみんなそれぞれ疲れていたこともあり、すぐに自室で休むことになった。
俺もこの学園に来て結構戦いには慣れてきたけど、それでもしんどいものはしんどいので今日はゆっくり休むことにする。
リンについて、色々と調べたいことはあったけど、親睦会が終わるとすぐにいつもの妖精の姿に戻っていたので、言及することもできなかった。
気が向いたらリン自身が話してくれると思うので、その時までは変に追求するのはやめよう。
そもそも、俺の周辺にはティアたちの加護もあるので、もしリンが悪いアウラだったとしても、そうそう簡単に不覚を取られることはないと思う。
そんなわけで、その日はすぐに寝て次の日の朝を迎えることができたわけだが、そこで一つだけ気になるものが増えていた。
「決闘システム?」
入学してから朱音たちに口を酸っぱくして言われていた獅子王アプリの確認をしていると、アプリ内に決闘という項目が増えていた。
そして、お知らせにも「決闘システムとクラン申請について」というものがきていたけど、あいにくそこまでゆっくりと見ている時間はなく、急いで宗一郎たちとの集合場所まで向かうことにした。
「おはよう。今日は授業に入る前に、みんな気になってると決闘システムとクランについて説明しようか」
葛木先生はいつもと同じように授業に入る前に、そう言って資料を配ってくれる。
今朝の登校中に、宗一郎たちとも話していたけど、みんなゆっくりと詳細を見ている時間はなかったらしく、配られた資料を見ながら葛木先生の説明を待った。
「まずは決闘システムから話そうか。決闘システムというのはこの獅子王学園の伝統なんだけど……」
葛木先生はそう前置きを言うと、決闘システムについて約1時間ほど説明してくれた。
この決闘システムというのは、獅子王学園の中でも重要視されるものの一つのようで、ルールや決まり、そして制約などが緻密に決められていた。
とりあえず、大雑把なルールとしては、決闘システムは基本的に一対一の決闘以外にも、多対多の混合戦、大将戦、攻城戦など約10種類にも及ぶ戦い方があるようだ。
そして、その形式によってポイントを得る量も上下するらしい。
詳しくは、獅子王アプリや手元に資料に書いてあるようだが、それよりも、このポイントがこれから獅子王学園で生活していく上で非常に重要視されるものとなる。
すでに、今のクラスによって支給されているポイントが異なり、Aクラスは1000ポイント、Bクラスは900ポイント……と上のクラスになるにつれて多くのポイントが支給されているようだ。
そして、月末に100ポイントを切った生徒の中で下位5名は強制退学らしい。
これは、一年生の今だけであり、これからどんどんとボーダーは上がっていくようだ。
この話が出た瞬間、俺たちのクラスでも緊張が走ったが、Aクラスはまだ1000ポイント支給されておりすぐに退学しなければならないというわけではないのでまだマシだ。
今頃、下位クラスでは阿鼻叫喚となっているはずだ。
「ただし、ポイントが多く支給されているからといって油断していいという話ではないので気をつけるように」
葛木先生の説明によると、俺たち上位クラスが下位クラスに決闘で負けてしまうと、かなりポイントを持っていかれるらしい。
そして、たとえ決闘に勝利したとしてもあまりポイントがもらえない。
ハイリスク・ローリターンという俺たちからすればできれば決闘したくないのが本音だが、Aクラスの生徒は下位クラスの生徒に決闘を挑まれ、それを拒んだ際にはマイナス10ポイントされるらしい。
なので、よっぽど外せない予定がある日以外は基本的に決闘を受けなければならないらしい。
まぁ、平日の放課後16時から19時までの3時間がその対象になるため、それ以外で拒否したところで問題はないらしいのでそこまで苦ではないそうなのだが……
ちなみに、このポイントは試験があるごとにその成果に応じて配布され、さらにポイントが多ければ多いほど学園での優遇措置がもらえるそうなので、Aクラスの生徒もさらに上を目指したいのであれば決闘は必須のようだ。
そして、これはAクラス内でも適応されるため、昨日までは友人だったとしても今日からは敵視することも少なくないらしい。
現に、この話を聞いてから若干クラスの雰囲気が緊迫し始めている。
まぁ俺たちはいつもと変わらないけどね。
ちなみに、これは学年が違っても適応されるため、上位クラスがより多くのポイントを得るには上級生に挑戦するか、講師たちに挑むのもありらしい。
「あぁ、ちなみに十傑の君たちには試験関係なしで、毎月10000ポイントが支給される。まぁ、十傑で居られるうちはだけどね」
葛木先生は笑顔で俺たちにそういった。
これを聞いたクラスメイトは十傑だけイージーゲームなんじゃ……と不満に思うかもしれないが、一年生を相手に勝ったとしても俺たちは一ポイントも入ってこない上に、負ければ1000ポイントは確実に持っていかれるらしいので、まぁ妥当かなとは思う。
そもそも、この学園は実力主義で、強者は優遇されるシステムの上に成り立っているので、羨ましければ頑張って十傑になればいいだけだ。
ただ、これだけだと俺たち十傑に無謀に挑んでくる生徒も多いだろうということで、特別に俺たち十傑は一週間に最低3回決闘に応じればいいらしい。
もし相手がいない場合は上級生か講師と戦うことになるらしいのだが、一発逆転を狙って挑んでくる生徒は多いらしいので、対戦相手に困るようなことはないとのことだ。
そんなわけで大方決闘システムについての説明が終えたとこで一度休憩となった。
「お疲れー。なんだか面白そうなのが始まったね」
「あぁ、ようやく獅子王学園っぽくなってきたぜ」
「龍之介、ほどほどにしときなさいよ。あんたは目を離すとすぐに戦いたがるんだから」
琴葉に注意されて、しょぼくれているけど、あれは絶対にいうこと聞かないやつだ。
このグループの中でも、龍之介は特に戦闘狂といっても過言ではないので、多分我慢できずに毎日決闘漬けになると思う。
それ以外は割と平和思考なので、注意する必要はないな。
「一応、蒼も気をつけなさいよ」
「え? 俺は大丈夫でしょ」
「あんた、可愛い女の子にお願いされたら絶対に断らないでしょ。なんなら、わざと負ける所まで見えるわ」
「さ、流石にわざと負けたりは……」
「決闘を受けるのは認めるのね」
「ぐぬぬ……」
確かに、可愛い女の子に挑まれたら断れる自信ないかも……
ま、まぁ最低3回は受けないとダメなんだし、別にいいじゃないか。
むさ苦しい男を相手にするより、可愛い女の子を相手にしてる方が100倍楽しいもんね。
「でも、蒼くん女の子に暴力できるの?」
「どうしよう! 俺、女の子に勝負を挑まれる=負けなんだけどっ!」
「清々しいまでバカね……」
女の子は愛でるものであって、傷つけるものじゃない!
「蒼なら色々やりようあるでしょ。それより、私はクランの方が気になるね」
「朱音さん? ちょっと雑すぎない?」
「ん? 構うのに疲れた」
「ひどいっ! そうやって私を捨てるのねっ!」
「うるさいな。ちょっと疲れてるの。静かにして」
「……了解」
ふむ、珍しく朱音が本気で気が立ってるようだ。
ここで、俺たちがしつこくその原因を聞くと本気でキレかねないので、こういう時は静かに引き下がるに限る。
何か問題を抱えてそうだけど、今この段階で踏み込むには理由がないし、あまりにナンセンスだ。
「確かに、クランも気になるな。あれって異世界でよく使われるものでしょ?」
微妙な空気を察して、宗一郎はそう話を引き戻した。
その後も、休憩時間が終わるまで軽く雑談を交わしたが、どこか空気が重たい気がした。
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