第23話 出雲透との出会い
「あちゃー……強く言い過ぎたかな?」
ちょっと調子に乗りすぎていたから軽く注意しただけだったんだけど、思ったよりも熱くなってしまった。
最近はAクラスのみんなと仲良くなれてきたかなーって思ってたけど、まだ俺のこと苦手な人は苦手っぽい。
蒼くんショックです。
「そんなことないんじゃない? それより、ありがとう。一条くんだよね? 私は……」
「出雲透さんでしょ? さっき聞こえてたから大丈夫だよ。それより意外だな。こんな美人さんに名前を覚えられるとは……」
「透でいいよ。君、結構有名だよ? いい噂も悪い噂も結構耳にするよ」
透はそう言ってニコッと笑った。
なるほど。見た感じ身長もそこそこ高くてクールな美人さんだ。
それに加えてコミュ力も高そう。
あまり他人にレッテルを貼りたくはないけど、陰か陽かで言ったら間違いなく後者に属する人間だ。
光田くんが思わず声をかけてしまうのもわかる気がする。
「んー人気者は困りますな」
「だねー。それより、一条くん買い物に行くんでしょ? 私もこれから暇だからもしよかったらついて行ってもいい?」
「透がよければ全然いいよ。まぁ、俺が離れた瞬間にもう一回……ってこともあるだろうしね」
「ありがと」
「俺も相手を探していたし助かったよ。それと、俺も蒼でいいよ」
「了解」
成り行きで透と買い物に行くことになってしまったが、光田くんがどこまで本気なのかわからない以上、しばらく俺が一緒にいた方がいいだろう。
役得でもあるしね。
透は思っていた以上に絡みやすいタイプで、朱音たちとは違った魅力があって一緒にいてすごい楽しかった。
ちょっとサバッとした性格のおかげで彼女の良さをさらに引き出している感じだ。
「これで透も晴れて掲示板のホットニュース行きだな」
「これで他の男の子が静かになってくれるなら全然いいよ。ありがとね」
「俺は虫除けスプレーか何かですか?」
「うむ。蚊取り線香として働きたまえ」
「報酬はその柔らかそうなおっぱいでよきですか?」
「水無瀬さんたちにチクっても問題ないのであればいくらでもどうぞ」
「……やめておこう。命が何個あっても足りない」
俺と透はそんな冗談を言いながら街エリアで買い物を楽しんだ。
ただここで俺は一つ思い出してしまった。
今日の買い物でティアたちに買ってきてくれと言われていたものがあることに。
「あの……透さん。ちょっと一つお願いがあるんですけどいいですか……」
「どうしたの?」
「えーっとですね……僕と一緒に女性用の下着を見に行ってくれませんか?」
「は?」
いや、俺だって物凄いことを言っているのは重々承知である。
でもしょうがないじゃん。
ティアたちがずっと裸で俺のベットに潜り込んでくるんだもん。
最初の方は嬉しいなーっと思ってそのままでもよかったけど、そろそろ俺も寝不足なんだもん。
しかもティアたちはアウラだし、外に出たら大変なことになるじゃん。
だから俺が買いに行かないといけないんだ。決して透にセクハラをしたいわけじゃない。
現在進行形で氷点下まで下がっている透さんの視線がすっごい痛いけど、一応事情を説明したらわかってくれた。
ただ詳しくは説明できないからどうしても透の誤解は残ってしまった。
もともと今日はその予定があるから朱音たちの誘いを断ってコッソリ来ようと思ってたけど、これは運命の悪戯だ!
「はぁ……なんとなくわかったよ。要は同棲してる女の子の下着を調達したいってわけね」
「ざっくりと申しますと……あれ? 俺ってかなりやばいやつじゃん」
「今更? まぁ蒼一人で行ってたら多分周りの子に通報されてただろうし、ちょうどよかったんじゃない? 今の時間帯女の子の少ないランジェリーショップ知ってるから連れて行ってあげるよ」
「マジで恩に着る。助かったよ」
「別にいいよ。何か訳ありみたいだし。私の読みではアウラ関係でしょ?」
「うぐっ……」
「なるほどね。そりゃ外に出れないわけだ」
「あの、あんまり口外しないでくれると助かります」
「わかってる。っていうかすごいね。常時アウラを具現化できるなんて、さすが十傑」
「えっへん!」
「えいっ」
調子に乗ったら透に頭チョップされた。
出会って一時間も経たずに俺の扱いが雑になってしまいました。
「ちなみに何着?」
「えーっと……十着くらい? サイズは預かってるから多分これ……」
「蒼は私の予想を超えるのが上手だね」
「透も、フォロー上手だね」
恥ずかしい。
これだったらまだティアたちに裸のままいてもらった方が良かったかもしれん。
結局、その後透に連れられるままランジェリーショップに向かうと、店員さんにもすごい目で見られました。
ただ透が上手く彼女ムーブしてくれたおかげでそこまで大ごとにはならなかった。
「本当にありがとう。マジで助かったよ」
「私のも買ってくれたしいいよー。これから妄想が捗るね」
「ええそれはもう!」
何故かランジェリーショップで透の下着も買わされました。
っていうか、よく彼氏でもない男にねだるなーって思ったけど、本人は全く気にしてなさそうだったので俺も気にするのはやめた。
もうすでに十傑の威厳なんてあったもんではないが、こっちは助けてもらってる側なので何も文句は言うまい。
その後は平和にお互いの買い物を済ませて、一応女子寮まで送って行くことにした。
何かあるかわからないし、透にしてもここまで恩を着せた相手であれば安心ということだろう。何も言うことなく俺を連れて行ってくれた。
「そうだ。透、何か恩返しできることない? ちょっとこのままだと気持ち悪いんだ」
「別に気にしなくていいのに。でもそうだな……じゃあ一個だけ頼まれてくれる?」
最初に透を助けに入ったことを加味してもその後のことで非常にお世話になりすぎたので何か手助けできることがあれば手伝いたい。
俺が透の言葉に頷くと少し言いずらそうにある提案をしてきた。
「もし良かったら私を鍛えてくれない? ちょっと次の試験が不安でさ」
「別に構わないけど、透なら本気出せば余裕でAクラスに来れると思うけど?」
「ありゃ、気づかれてた?」
「まぁ一応俺も十傑だしね」
どう言う事情があったのかは知らないけど、透は本気出せば多分十傑ともいい勝負すると思う。
学力の方も話していた感じ俺よりも賢いのは確実だ。
となると、入学時の審査は偽っていたのかそれとも何か事情があるのか、個人的にもちょっと気になってたところだ。
「私はあんまりクラスとか気にしてなかったからDクラスでもよかったんだけど、さっきみたいなことがこれから起こってくると私もめんどくさいからさ。それに、Aクラスにいけば蒼たちと同じクラスになれるでしょ?」
「そのまま十傑を目指すのもいいんじゃない? 十傑すごいよ。色んな特権あるし」
「んー。それも魅力的なんだけど、ちょっと問題があって私アウラを召喚できないんだよね」
「……なるほど。大体透の置かれている状況はわかった。それなら俺がなんとかできると思うよ。十傑特権で訓練場も貸し切りにできるしね」
「それめっちゃ助かる。めんどくさいことは嫌だけど、ちょっとAクラスに興味が湧いたし、これを機にそっちに行くよ」
これが透じゃなければ多分相当頑張らないとAクラスには上がれなかったと思うけど、透のポテンシャルがあればそこまで詰め込まなくても問題ないだろう。
俺も一応そこそこ強いから透がどれだけ強いかは分かる。
多分アウラなしだと第九席か第十席は狙えると思う。
後はいかにアウラの問題を解決するかだが、これは今日じゃなくても大丈夫だろう。焦っても無駄なのは俺が一番わかっていることだし。
「今日は助けてくれてありがとう。蒼、思ってたよりも面白そうな男の子で良かった」
「こちらこそ色々とサンキューな。じゃあ、また連絡するよ」
「うん。また明日」
「また明日」
俺が動かないといつまでも透が中に入りそうになかったので、最後に軽く挨拶を済ますと振り返ることなく帰路につくことにした。
見た感じ逸材っぽいし、俺も面白い子に会えたから今日という日は割と充実してたかもしれない。
ちなみに、帰ってティアたちに下着を渡したときはみんなにニヤニヤされてさらに羞恥心を掻き立てることになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます