第11話 授業開始

 昨日はあの後買い物を済ませると一旦解散となり、疲れた俺は早々に自分の部屋でゆっくりとしていた。

 さすが最上階ということもあって、夜景がめっちゃ綺麗だった。

 隣で一日中不機嫌だった朱音様や琴葉様、佳奈様が非常に満足げにジュースを飲まれていたので僕も良かったと思います。


 プライベートがほとんどないんだよな俺。


 テンション上がって「今日は泊まる」とか意味のわからないことを言い出した3人をしっかりと自分たちの部屋に送り届けた後、俺は無意識のうちにベットにダイブしていたようだった。

 起きたら朝の7時だったのは焦ったね。


 俺はさっさと支度をしてギリギリみんなとの集合時間に間に合い、そのまま7人で登校することができた。

 昨日も薄々感じていたけど、すでに学園内でカーストのようなものが出来上がっており、登校している生徒の表情で大体どのクラスなのかがわかった。


「今日から授業だよね。一時間目は何するんだろう」


「昨日獅子王アプリで連絡来てたでしょ。午前中は講義で午後から実技だよ」


 俺がボソッと呟くと、朱音がジト目で俺のことを見ながらそう言ってきた。

 ヤバい。昨日はあの後カナタを開いてなかったから何も見てなかったわ。


 まぁ、講義に関しては一応ノートとペンがあればなんとかなると思うので心配ない。

 実技もこの制服かなり性能いいから大丈夫だろ。


 後で魔法で汚れないようにしておこう。


「……教科書とかって必要ないよね?」


「うん。確か今日の授業で配布するって書いてあったよ」


 佳奈の言葉を聞いて俺は安心した。

 

 これからカナタはこまめにチェックするようにしよう。


「どうせお前授業なんて真面目に聞かないからいいだろ」


「失敬な。お前と一緒にしないでほしいわ」


「じゃあ2人とも授業中に寝てたら体に電気流してあげるよ」


「「……」」


 うん。やっぱり変に張り合わない方が良さそうだ。

 龍之介とは友達のままじゃないと、いずれ2人して朱音たちに身を滅されるね。


 教室に着くと、昨日のデモンストレーションが上手くいってたのか、あまり絡まれるようなことはなくなったので良かった。

 みんなきっとAクラス以外の実情を知ってそれどころじゃなくなったんだと思う。


 十傑はある程度地位が確立されてるけど、それ以外はまだまだ不安定だ。

 試験の結果が悪ければすぐに下のクラスに落とされたり、最悪の場合退学だってあり得る。

 今俺たちに絡んで足の引っ張り合いなんてしてると真っ先にそのコースに乗ってしまうため、自分磨きに専念しているのだろう。


 早速昨日、一年生が使える訓練場は全部満員だったみたいだしな。


 今カナタで予約状況を確認してみたら、土日は全部の時間帯が既に埋まっていて、今から予約をするには少し遠い訓練場しかなかった。


「まぁ俺たちは今日の実技の時間でどうするか決めればいいか」


「そうだね。俺たちもうかうかしてられないね」


「だなー。最近彼女たちを呼んでないから上手く実体化できるか不安だよ」


「自分のフロアでは自由にさせたあげたらいいじゃん。自分で結界を張らなくてもあの寮、勝手に発動してくれるから外にバレる心配もないよ」


「あーそれはありかも」


 彼女たちを召喚して……朱音たちのいない時間にしないといけないな。


 ここ一週間ほど全く実体化させていないので、結構3人とも不機嫌っぽかったし、今日帰ったら召喚しようかな。

 俺の場合きっと自分で結界を張らないとダメだろうけど、それくらいはもう慣れたし大丈夫だろ。

 夢に出て来られるよりかは断然マシである。


 それに最近俺も会えてなかったからちょっと寂しいしね。


「はーい。みんな席について。授業始めようか」


 宗一郎と話をしていると、葛木先生が教室にやってきて早速授業が始まった。


「まぁ今日は授業初日だし、基礎教科は置いておいて実技に向けてアウラや贈り物、魔力について話していこうかな」


 俺たちのカリキュラムとしては、他の高校と同じように基礎科目が5教科あり、それに加えて魔法概論やさっき葛木先生が言っていたアウラなどの異能についての授業がある。

 その中で今日はアウラなどの異能についての講義をしてくれるらしく、早速葛木先生はアウラの起源について話し始めた。


「アウラと称される中にも、種類は多岐に渡るのはみんな知ってるよね? 代表的なものでいうと精霊や天使、神様だってそうだ」


 他にも悪魔や異世界の英霊、神話に出てくる鬼や神獣もアウラとして契約できたりする。

 まぁ、基本的に今出てきた精霊以外は非常にレアかつ契約が難しいアウラばかりなので、Aクラスはまず初めに精霊と契約できるように頑張らなければならない。


「この中でもランクがあって、主に厄災級、そして1級から10級と結構細かく分かれている」


 このランク付けは神界で行っているらしく、選定神が全ての生物にランクをつけているらしい。

 なんでも管理がしやすいのだとか。

 俺たち人間もそのランクシステムを借りて、アウラたちにランクをつけているのだが、一つランクが違うだけで強さが大きく変わってくる。


 その分契約の難易度も爆発的に上がるんだけどね。


「ちなみに、下級精霊が10級に当たるんだけど、この下級精霊と契約を結ぶのでさえ普通なら半年以上かかるからあまり気負いすぎずに頑張ってほしい。下級精霊と契約できた時点で無条件でE級魔法師になれるから、このアウラとの契約は非常に重要なんだ」


 この辺りは昨日宗一郎が説明していたが、明確にはアウラとの契約がなくてもS級魔法士になれたりするのだが、可能性はかなり低い。

 アウラとの契約があるかないかでは魔力の効率や戦術の幅が大きく変わり、契約しているのとしていないのとでは雲泥の差が生まれてくる。


 アウラと契約できていない魔法士たちは『見習い魔法士何級』と言った形でランク付けされ、実力や実績が認められるとはれて魔法士になることができる。


 ただアウラと契約していたらこのプロセスを踏む必要がないため、非常に楽に出世することができるのだ。


 まぁ、そもそも契約できる人が少ないからそう簡単な話じゃないんだけどね。


「先生、アウラとの契約ってそもそもどうすればいいんですか?」


「午後の実技で実際に実演するけど、魔法陣を使って召喚するのが一般的だね」

 

「そ、それだけですか?」


「召喚するまでは簡単なんだよね。そこから契約にもっていくまでがかなり難しいんだ。こればっかりは実力もそうだけど相性が合うかどうかっていう運の要素も強いから、今の2年生でまだアウラと契約できていない生徒も結構多いよ」


 この魔法陣だが確か一般の生徒は魔道具を使って描くのだが、結構高価なものだったはずだ。


 とても学年全員に何度も挑戦させるほどこの学園も潤っているはずないと思うのだが……


「君たちAクラスは無償で魔道具を何度でも使えるからね。失敗してもあまり気を落とさなくてもいいよ。ただ、先に言っておくと一月後にアウラと契約できなかったら無条件でBクラスに移ってもらうからね」


「「「「っ⁉︎」」」」


 葛木先生の言葉にAクラスの生徒たちはみんな驚愕していた。

 まぁそれもそうだと思う。


 さっき2年生ですらまだアウラと契約できていないと説明しておきながらAクラスの生徒は全員一月でそれをしなければいけないと言われてるのだ。

 文句の一つも言いたくなる気持ちもわかる。

 ただ、高価な魔道具を何度も使わせてもらいながら、一月で契約できないとなるとそれはそれで生徒の問題と捉えられても仕方ないなとも思うのでこればっかりは頑張れというしかないのも事実だ。


 ちなみに俺たち十傑および数人は既にアウラと契約できているためもうクリアとなっている。

 俺たちが気にすることといえば、一月後にある試験のことだけど、これはまだ内容すら発表されていないのでどうしようもない。


「まぁみんな頑張って。毎年Aクラスはほぼ全員クリアできていることだし、死ぬ気で頑張ればなんとかなるさ」


 葛木先生は笑顔で俺たちを励ましているが、言っていることがむちゃくちゃひどい。


 ちょっとサディスティックな一面に俺たち生徒は苦笑いを浮かべながら、午前の講義を受けるのであった。

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