私の
甘味料
1
コンビニのみたらし団子を二本ずつ分け合った私たちは、髪を靡かせながら明日の授業の話をしていました。
それはとても幸せな夢のような時間で、私は夕陽に光るあの子の瞳を盗み見ています。
揺れるカーテンが綺麗で、あわよくばこのカーテンに二人包まって永遠を誓えたらだなんて思いました。
指輪が必要だ。
指輪何て必要ないと、君は笑ってくれるのだろうなとなんの根拠もなく思い、そして愛しさに耐え切れず微笑みました。
どうしてこの時間が有限なのでしょう。
化粧っけのないあの子の顔はあまりに美しく、人間ではない何かを連想させます。
もしあの子が人間ではないのなら、私が死んでともに永遠の時を過ごすのもいいなとぼんやり思いつきました。
提案はしません。
やはり私はこのようなゆっくりとした有限の時間をあなたと過ごすのが、人生においてどうしたって重要なのでした。
ふと、キーホルダーをあまり好まないあの子の鞄に、フリルを着た熊が揺れていました。
それになぜか強く引き止められた私は、聞いてみることにしました。
「それ、買ったの?珍しいね。」
私は君がキーホルダーを苦手なのは知っているが、大切なものなら例外もあるのであろう、でも考え得る最悪の可能性に嫉妬を滲ませました。
君は彼氏に買ってもらったと言いました。
どういうことか分かりませんでした。
私と遊びに行ったとき買わなかったキーホルダーを、彼氏に買ってもらったから付けているのが理解できませんでした。
少女漫画でよく見る”そんな顔初めて見た”ことによって失恋を自覚するシーンが脳裏をよぎりました。
嬉しそうに、そして恥ずかしそうに微笑み俯く彼女の顔はとても美しく、まるで邪神のようだと思いました。
こんなに美しい邪神がいてたまるか。
そう思いました。
いつ彼氏ができたのか、なぜすぐに教えてくれなかったのか、私とのキーホルダーは付けてくれないのか。
聞くまでもありませんでした。
私たちはそれほどだったのです。
あの子の前と咀嚼音を少し気にしながら食べていたみたらし団子が、酷く苦いように感じました。
可能性なんて、ないと思っていたはずだった。
あまりに醜い、勘違いの日々でした。
私の 甘味料 @kama-boko3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます