夕暮れの鐘が鳴ったら

春嵐

第1話

 夕暮れの鐘が鳴ったら。ふたりが別れる合図。

 彼女は今日も、砂場と鉄棒とすべり台を満喫して。満足そうに自分の隣に腰かけている。もう、すでに、眠そう。


「時間だなあ」


 鐘が鳴る。

 郊外の小高い丘のところに教会があって、その鐘が鳴っていた。夕暮れを知らせる鐘なので、季節によって、日によって鳴る時間は異なる。そして、鳴ってからちょっと経つとすぐ暗くなる。


「もう時間かあ」


 彼女が離れがたそうに、寄りかかってくる。


「よいしょ」


 立ち上がる。彼女にも手を貸して。彼女も立ち上がる。


「じゃ、行くね」


「うん」


 ふたり。別々の道。

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