私の執事はSSRの君。

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第1話

 

 キーンコーンカーンコーン


 午前中の授業が終わり、お昼休み。



真陽まお〜ご飯行こ?」


「あ、あずちゃん。私、今日お弁当〜」



「え?お弁当?珍しい〜ってか初めて何じゃない?かえで叔母さん作ってくれたの?」


村瀬むらせさんと…」



「あ、そうなんだ。じゃあ、私は購買で何か買ってくるよ。屋上で待ってて」


「うん。わかった」



 暫くして、あずちゃんがサンドイッチといちごミルクを持ってやって来た。



「おまた〜」


「ベンチ取っといたよ」



「あんがと。お?真陽まおのお弁当美味しそぉ〜」


「そ、そうかな?お手伝いの村瀬さんに教わりながら作って見たんだ」



「え?何それ?それ真陽まおの手作りなの?」


「えへへ〜、初挑戦してみた」



「ほぇ〜、真陽まおって何でも出来るねぇ~」


「な、何でもは出来ないよ!出来る事だけだよ!」



「テンプレありあしたー!」


「え?なに?天ぷら?」



「いや、なんでもないよ。まっ、いいじゃん?」


「そう?」



「そんなことよりさぁ、真陽まお。あれ何処まで進んだの?」


「ふぇ?あれって?」



「あれは、あれよ!トワイライトプリンセス!あのゲームのクエスト、だいぶ進んだんじゃない?真陽まおやり込み厨だしねぇ~」


「ふぁっっ!ななな、何を言ってるのかな!」



「隠しててもバレバレよ?真陽まおはすぐに顔と態度に出るんだから」


「あ、あ、あ、あ、あずさちゃんてば、な、な、何のことかなぁ〜。ぴーぷー」



 口笛は苦手なので、音声に出してみる。



「はぁ、真陽まお。貴女それで本当に勝人かつと叔父さんとかえで叔母さんに隠しきれてるの?」


「うっ!」



 あずちゃんこと、立花梓あずさちゃんは私の従姉妹いとこで、お父さんのお兄さんの娘さんだ。


 お爺様の遺産の土地にお隣同士で一軒家を建てて中廊下を家と家の間に通す程、うちあずちゃんのご両親はとても仲が良い。



 お陰で私達は、親戚であり、幼なじみ腐れ縁であり、友人ライバルであり、親友マブタチなのだ。


 そんなあずちゃんから教えて貰ったMMORPGの話。



 あずちゃんのお家で盛り上がっていたところ、仕事から帰ってこられた誠一せいいち叔父さんとさき叔母さんに聞かれていたようで、去年の入学祝いに、こっそり買っていただいた。


 なので、私のゲームソフトは[トワイライトプリンセス]一本のみだけしか持っていない。



 その[トワイライトプリンセス]のゲーム内でもあずちゃんとは良く遊んでいるのだけれど、この間の期末試験で、あずちゃんの成績が20番も下に落ちて、ご両親に大目玉を頂いたようだ。


 という訳で成績が戻るまでの間、あずちゃんはゲーム禁止令をご両親に発令されているそうだ。



 私も女性専用という事で安心して遊んでいたのだけれど、あずちゃんの非常事態宣言とあっては手伝わない訳には行かないのだけれど、あずちゃんが私の説明を、余り理解してくれていない様に感じる。


 あずちゃんが、何が解らないのか解らない。



 私自身、勉強は苦手ではないし記憶力も集中力もあると自負しているので、成績は常に1桁台をキープしている。


 2年生ともなれば各先生方の出題の癖のようなものも把握出来るので基本的に授業だけで何とかなってしまうし、本当にあずちゃんは何で分からないんだろう?



 仕方ないので、私はあずちゃんを陰ながら応援するしかなくて、暇を持て余した私は、料理を学んだり、日課のランニングや柔軟をする。


 それでも効率化を旨とする私は、いつも暇を持て余す。



 そして仕方ない、そう仕方ないのだと自分に言い訳しつつ、あずちゃん、ごめんね!と胸の内に思い込めて、ベッドに寝転び[トワイライトプリンセス]にダイブINするだった。

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