第15話
硫黄の香りは先に入った温泉と変わらない。
温泉に入っている実感を感じながら各々が足を延ばしている。
「寒さと言えば、仙台や秋田らへんも北海道とは違った寒さらしいけど…温泉旅行に行く機会があったら是非とも堪能してみたいね。」
「一番の寒がりのミーちゃんがそれを言うの?
冷え性の私が言えた事じゃないけど。」
そんな事をミナト達が話していると、オオダがミナトの足元に目がいった。
ミナトは体育座りのように丸まって座り、両足指の間に両手指挟むように組んでいた。
「ミナトよ、その手は何故?」
「あぁ、私も冷え性なんよ。
結構前に足の指の感覚を開けて血流をよくすると良いって聞いたからやってみてるの。
寒くなるとよくやるけど、私みたいに軽い冷え性位なら結構効果はあるよ。」
オオダがミナトの足を指差してそう言うと、ミナトは淡々とそう答えた。
酷い冷え性の症状は知らないが、毎年つま先が凍ったんじゃないかって位冷たく感じるときがある。
「分かるっ!!
この時期になると5本足の靴下とか重宝するのっ!」
そんなミナトの言葉に対してかなり力強くアキは返した。
噛みしめたように言うあたり、彼女も相当悩まされているようだ。
そんな話を終えて、3人は露天風呂に向かうべく外に出る扉に手をかけた。
風の影響なのか、少し重たい扉を開ける。
「さっっむ!」
寒さにめっぽう弱いミナトは扉を開けた先の気温の低さに思わず声を上げた。
「情けないなぁ、ミナトは。
ウチはポンポンが冷えなかったらヘーキだぞ。」
「ふふ、この寒さで根を上げるなんて道民の恥さらしね。」
フンスと白い息を出しながらお腹を守るようにドヤ顔でそう言うオオダに対してアキは携帯のマナーモードのように震えていた。
さっき自分は冷え性なんだって言っておいて、何で強がったのだろう。
ポカンとする2人の間に耐えられなかったアキは、やや駆け足で露天風呂に向かい一足先に湯に浸かる。
ほうっ…と一息ついた後にミナト達に向かって大きく手を振った。
「ほら、2人とも風邪ひくわよ。」
「やかましいわ!」
オオダのキレッキレのツッコミが辺りに響き渡る。
周りに人がいなくてよかった。
そう安堵しながらミナトはオオダの横を素通りしてアキに続くように温泉に浸かる。
体の負担にならないように足のつま先からゆっくりと少しずつ温泉の中に入っていく。
なんで寒い時に浸かるお風呂はこんなにも気持ちがいいのだろう。
ほうぅっと、柔らかく息を吐きだして3人は温泉に座り一呼吸置く。
オオダが真ん中に座っているために文字通り川の字のようだった。
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