第14話

部屋に戻り、備え付けの浴衣とタオルを持って3人は温泉に向かう。



「どれ、せっかくだし使ってみるよ。」



おもむろにカバンの中からミナトのプレゼントした本物の肉のように包装された肉タオルを勢いよく取り出す。

パッと見て本物みたいだから、後ろからえっ…驚いたような声が聞こえた。


そんなざわついた声をおかまなしに、オオダは包装をあけてタオルを取り出すが…出してみると思ったより普通のフェイスタオルだった。


肉のような暗めの赤をベースに脂身をイメージした白の線。

入っていた包装を知らなかったら普通のボーダーのタオルに見えただろう。



「あら、開封したら思っていたより普通なのね。」



ガッカリ…そう言った様子でオオダの頭に手を置いて覗き込むようにアキもタオルをみる。


少し鬱陶しそうな表情をしながらオオダはアキの手を振り払うと、わんぱく坊主顔負けの速度で服を脱ぎ始めた。


彼女の凄い所は、結構な速度にも関わらず服はピシッと畳まれてロッカーの中に入っている所だ。



「相変わらず、早いわねオーちゃん。

綺麗に畳んでいる辺り、ミーちゃんとは大違い。」


「え、私をディスる必要あった?」



チラリとアキが眺めたロッカーの中はクシャクシャに詰め込まれた哀れな服たちの姿があった。



「どうせ、帰ったら洗濯に出すからいいじゃない。」



頬を膨らませて静かに抗議するミナト。

ミナトを揶揄うのが楽しかったようでアキはクスクスと堪えるように笑っていた。



「ほれ、じゃれてないでそろそろ行こうか温泉へ!」



そういうとオオダは、ミナトから貰ったフェイスタオルを勢いよく肩にかけて歩き始める。

乾いているため勢いも音もなかったが、絵面はかなり男前だ。


やだ…素敵…。

などとふざけた後に2人も後に続く、オオダのタオルが正確に見えたのか後ろから安堵するような声が聞こえたが気のせいだろう。




そんなこんなで、温泉にたどり着いた三人。

脱衣所から下るようにして温泉があるようで、市民プールを思い出す。




階段を下って浴場の中心に大きく作られている大きな湯舟と、室外に露天風呂があるようだ。

温泉の湯質の為に足を滑らせないように3人は階段を下りる。




「そういえば、なんで温泉や銭湯の床ってこんなに滑るんだろう。」



「結構シンプルな答えよミーちゃん。

温泉の成分も理由の一つだけど…大理石や磁器タイルみたいに水を弾く床材は水を表面に留めてしまいやすい状態になってしまうらしいの。

表面に水が留まっている状態のままだと、摩擦力が弱くなるから滑るんですって。」




ミナトの素朴な疑問に自称雑学女王のアキはサラサラとそう答える。


なるほどっとミナトが言う頃には階段を降り切っていて、そのままの足で洗い場に向かって体を洗う。


秋と冬の北海道の夜はかなり冷える特に山の中にある登別温泉は温泉も寒さも一級品だ。

いきなり外はしんどい為、まずは室内風呂で体を温める。



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