第12話

現在の時刻は18時過ぎくらい、そんなこんなで夕飯の時間だ。


財布と携帯と食券を握りしめて、3人は部屋を出る。


部屋の鍵の管理は勿論、ママことアキだ。

手慣れた様子で最後に出て鍵をかける。



「忘れ物はない?」



チャラチャラと金属が擦れる音を響かせ鍵をしまいながら、アキはそう声をかける。



「ウチは大丈夫。」


「私もへーきだよー。」



持っていくものが少ないから、忘れ物というものはないだろう。

食券さえあれば、何も問題ない。


3人はテコテコと会場まで進んでいった。



会場についた3人は、席をタキシードのような格好をしたナイスミドルのホテルマンに案内される。

オールバックのような黒髪をしていて整えられたちょび髭。


飲食関係で髭はよかっただろうか?

などと考えながら、ホテルマンの話を聞く。



とはいえ、説明はどこも変わらない。


各ブースにある食べ物を好きにとっていって食べ、アルコールの飲み放題は別途で料金がかかる。

食べ終わったら、テーブルの上にあるカードを食べ終わった事胸が書かれている側に裏返して帰るだけ。



今回は人数の関係でお酒をそれなりに持参したいうこともあり、アルコールの飲み放題は頼まなかった。



説明が終わると、各々の今宵の晩餐を求めて彷徨っていく。



今回は蟹フェアらしく、なんと蟹が食べ放題らしい。

北海道のホテルではよく見る光景なので、ミナトはあまり気にも止めないで辺りを見る。


肉やサラダ、前菜と主食がわりのうどんを手に取って席に戻った。



席に戻る途中、テーブルいっぱいに並べられた蟹の足が乗った皿があった。

まるでバイキングの取り口のような光景に流石に一瞬だけギョッとしたが…好きなものをどれだけとってもいいと言うのがバイキング。


何を食べたいかは個人の自由だからこれ以上は何も思うまい。




フッ…と達観したような表情で通り過ぎた後に、頼り無さ気に服の裾が引っ張らられる。

後ろを振り返ると、やや目線の下にオオダがいた。



「ミナト、アレはヤバい…どこぞのバラエティーのフードファイトかよ。」


「オオダドン、それ以上はアカン。

同じものを一貫して食べるのも、別々で食べるのもコレの醍醐味なんだから。


そもそも、バイキングってシステム自体がフードファイトと同じやん。」



た、し、か、に!

ハッとした表情でオオダは、ミナトを見る。



そんな話をしていたら、自分達の席についており2人はテーブルに食事を置いて座った。




「なるほどね、蟹とたしかにをかけているのね。」



「ちょっとなんて言ってるかわかりませんね。」




先程のやりとりを見ていたのか、フフーンっと言った表情でアキも後から座った。

相変わらず親父ギャグがお好きなんだこと。


ミナトはサラッとそう返すと、両手を合わせていただきますと呟く。












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