第3話


「お待たせー。」


「おん、おかえり。」



アキは、二階の酒売り場でウロウロしていたミナトに後ろからそう声をかけた。


ミナトは何の気となく後ろを振り返るが…オオダの姿が見えない。

いや、よくみるとアキの後ろに隠れている。


小柄なオオダはすっぽりと、アキの服を摘んで後ろに少し背中を丸めるようにして僅かに出ている耳はほのかに赤く色づいてた。



「おいおい、隠れながら赤面で恥ずかしがるとか逆効果だよ。

オオダドンは、萌えという日本の文化を知らないのかな?」


「うるさい!」



カラカラを笑って茶化すミナトに、オオダはそう言葉を返した。

睨むほどではないが、恥ずかしそうにキッとして返事すその姿は最早100点満点だろう。


これ以上はいけないな。

その感想を胸に秘めてミナトはジロジロとオオダを眺める。



アキのように横の髪を編み込んで、ピンで止めてワックスなどをつけたのか毛先が少し丸く仕上がっていた。

服装も少し整えられていて可愛いとボーイッシュな感じが合わさった雰囲気になっている。


こいつ…最強か。

ミナトがそんな頭の悪いレビューを脳内で言っていたのを察したのか、思った以上の出来の良さに満足したのかわからないがアキはドヤ顔で親指を上げでグッとポーズを決めていた。




「早く買い物しないとバスに遅れるよ!」



お披露目が終わりヤケクソ気味で、酒売り場の中心に向かってズンズンとオオダは進む。

とはいえ、そんなにガツガツと飲むわけでは無い。

購入したのは数本のビールと酎ハイとソフトドリンク、ボトルのワインを一本におつまみとしてポテチなどのお菓子だけだ。


酒売り場の次は、移動時間の長いバス移動のなかで昼食がわりに簡単に摘めるものを地下の食品売り場で物色。


地下での買い物を済ませたら、ちょうどいい時間になった為にそのままバスターミナルへ向かう。

JRの下車時間と他のバスの到着時間と被ったようでかなりの人混みが札幌駅に集結していた。



「けっこう人がいるねぇ。」


「ウチが先陣をいくで!」




人混みにうんざりした表情のミナトの横を通り抜けてグングンと人混みをかき分けていくオオダ。


綺麗に整えられた服装を気にもせず進む姿はなんて男前だろう。

しかも、一番痴漢の標的にされそうな女が一番前に行くのか。

オオダもそうだが、見た目以上の力が発揮できる彼女に撃退された痴漢の処理とかも面倒だ。




「まってオオダドン、今のあーたは虫を引き寄せる灯りみたいなものだから不用意に1人で前進しない。」



色々な思考が頭をよぎったミナトは軽くため息をつくと、やや声を張ってオオダにミナトがそう追いかけようとするが走りだそうとした瞬間にアキが軽く躓いた為に咄嗟にミナトは肩を支える。



「あら…ミーちゃんしてはやるじゃない。

ごめんね、靴を買い替えたばかりなの。」


「まぁ…肉体が追いつけるかどうかは別として反射神経だけはいいから。

足は大丈夫?」



アキはミナト憎まれ口を口にした後に足首を回したり足踏みをして足の容体を確認した後に大丈夫と答えた。

表情が頭で変化とかしてなさそうだから恐らく大丈夫だろう。


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