53話 S級ダンジョン奥地でネコ獣人を拾う
――3週間後。
拠点は、不自由なく活動できるようになっていた。
まず、家は完全に完成している。
まぁ切り倒してすぐの木材を使っているので、半年ほどしたら木材の中の水分が抜けきって変形してくるだろう。その時には、一度分解してもう一度立て直すつもりだ。
庭では、野菜が育ち始めている。成長の早いラディッシュはもう1度収穫できた。他の野菜も1カ月もすれば採れるようになるだろう。
地上から持ち込んだハーブも必要な時に摘んでこれる。ハーブは実は広がる速度がとても速く、その土地元々の植物の住処を侵略してしまう。庭の外に出てダンジョン元々の生態系に影響を及ぼさないように気を付けよう。
ダンジョンの中はずっと同じ季節なので、地上の麦は育たない。主食としてイモを育てることを考えていた。
しかし何と、ダンジョンの中に麦に似た穀物が自生しているのを見つけた。
小さな畑を作って種を植えてみた。上手くいったら、ダンジョンのなかでパンが食べられる。
毎日主食がイモ生活を覚悟していたので、ありがたい誤算だ。
ダンジョンから植え替えた薬草も、少しだが増えている。あと2,3週間もすれば出荷できるだろう。
庭の植物は、全て専用のミニゴーレムに水やりを任せている。
水源確保のために、小川も引いてきている。川を引いてしばらくしたら、小さな魚なら来てくれるようになった。
水棲モンスターが入ってくるほどの大きさはないので、安心だ。
この小川で釣りをしたり、川のせせらぎを聞きながら近くで昼寝するのが好きだ。近くに飢えているハーブの香りが風で運ばれてくるので、心が休まる。
そして、家と庭を囲むのは要塞のような防壁。
”グルルルルアアアァ!”
外からモンスターの遠吠えが聞こえる。群れで襲撃してきたみたいだ。
迷路のように入り組んだ通路を通って、モンスターの足音が迫ってくる。
迷宮の中の大型ゴーレムが起動。
”ドゴォッ!”
迷宮の中で、大型ゴーレムがモンスターを迎撃する。
空を飛んで壁の上から侵入してくるモンスターもいるだろうが、その時は中で待機している別のゴーレムが矢で撃ち落としていく構えになっている。
どのゴーレムも、耐久性に重きを置いて、しっかり作っている。1カ月は十分に動いてくれるだろう。
子供ほどの大きさの汎用ミニゴーレムが、3体協力して、倒したモンスターを運んでくる。
こまごまとした仕事は、全てこの汎用ミニゴーレム達に任せている。小回りが効いて、なにかと助かる。
汎用ミニゴーレムが、モンスターを、解体場にいる解体専用のミニゴーレム達に引き渡す。
解体専用ミニゴーレムがモンスターを
・魔石
・素材
・食べられる部分
・畑の肥料にできる部分
・それ以外の、捨てるしかない部分
に分ける。そして、汎用ミニゴーレムがそれぞれ保管庫や食糧庫へ運んでいく。
解体専用といってもまだまだゴーレムでは解体が難しい時がある。そんな時はモンスターの解体が得意な僕を呼びに来てくれるようになっている。
返り討ちにしたモンスターから取り出した魔石を、ゴーレム達に配って動力源にする。
こうして、モンスターが襲撃しに来るたびにゴーレム達の動力源と食料が確保できる無限ループが完成した。
こうして拠点を充実させながら、少しづつダンジョンの探索も進めている。
ガレックに道を舗装してもらいながら地図を埋めていく。こうすることで、次に来るときはもっと快適かつ早く道を進むことができる。
そんなある日。
僕が小川でのんびりと釣りをしているとき。
「助けて欲しいのニャ、助けて欲しいのニャ……!」
壁の外から、不思議な声が聞こえる。
このS級ダンジョンに入れるのは、第13勇者の称号をもつ僕だけしかいないはずなのだが……。
恐る恐る様子を見に行くと、妙な人影がいた。
なんと、二足歩行する猫だ。大きさは子供と同じ程度。服は着ておらず、全身淡い茶色の毛。
どうやらケガをしているらしく、あちらこちらから出血している。
「初めまして、ボクはキャト族の長、マロンと言いますニャ。どうか、どうか助けて欲しいのですニャ……」
そういうや否や、マロンはばたりとその場に倒れてしまった。
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