50話 念願のS級ダンジョンへと足を踏み入れる

――翌日。


 街から馬車でおよそ1時間ほど離れた場所に、それはある。


 一見すると、単なる古い石製の門だ。


 だがその存在の影響力を示すように、周りは新しい壁で厳重に覆われ、両脇には武装した冒険者ギルド職員が経っている。


 こここそが、大陸に13存在するS級ダンジョンの1つだ。


「どうも、第13勇者のナットと、使い魔のアルカです」


「「お疲れ様です、どうぞお入りください」」


 ギルド職員に冒険者ライセンスを見せて挨拶すると、入場が許可される。


 勇者だった頃のハロンのパーティーメンバーとしては何度も来たことがある。


 だがついに僕は、”勇者として”S級ダンジョンに足を踏み入れた。


 ――勇者の最大の使命は、S級ダンジョンの番人。ダンジョンの中のモンスターを減らして、地上に来させないことだ。


 S級ダンジョン、ロマネクの迷宮。


 地上に露出しているのは、石作りの門の部分だけ。


 しかし門をくぐって長い長い石製の螺旋階段を降りると、地下に広大な樹海が広がっている。


 顔でさわやかな風を感じる。


 地下のはずなのだが、光がさしている。頭上遥か高くに見える天井が発光しているのだ。昼と夜もある。


 僕は遭遇したことはないが、なんと雨が降ることもあるらしい。


 その原理を突き止めようと壁を登ろうとした学者もいたらしいが、高すぎて不可能だったと聞いたことがある。


 樹海の中には石造りの道が走っている。もっとも、崩れたり樹に飲み込まれたりして行き止まりになっていたりすることが多いのだが。


 ゆえに、迷宮と呼ばれている。


 この迷宮は、明らかな人工物だ。


 いつの時代の人が、どんな技術を使い、どんな目的で立てたのか。それら一切は謎に包まれている。


 これは、他のS級迷宮も同じだ。


 迷宮は複数階層に分かれており、迷宮の最奥に到達した勇者はまだ誰もいない。迷宮が何階層まであるのかも不明なのだ。


 僕は勇者の称号という、その謎を解き明かす権利を手に入れた。そう考えただけでぞくそくする。


「僕が迷宮の謎を解き明かすんだ」


「頑張りましょう、マスター。私も少しワクワクしてきました」


 そのための一歩として。


「ダンジョン探索のために、まずダンジョンの中に一軒家を建てようと思うんだ」


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