6限目 メールと手紙

「はぁ」


 レイラはピアノの練習を終えると鍵盤蓋(けんばんふた)を閉めながらため息つき、そこに頭をつけた。


(いつもと違う行動したが、なんも交わんねぇよな。そりゃ、そうだよなぁ。ソファに座るだけじゃなぁ。これから何があるんだ?)


 レイラはおもむろに立ち上がり、ゆっくりとピアノの部屋をでた。


 自室に戻ると、机に上にあるパソコンを開いた。さっき電源を入れておいた為、スリープモードになっていた。

 レイラはすぐにブラウザを立ち上げて、昼間にまゆらと確認したフリーメールのサイトにアクセスした。


「あ……」


 下書きボックスに印がついているのを見つけるとレイラはすぐに開いた。


『レイラさんへ さきほどは図書館でお世話になりました。とても楽しい時間をありがとうございます。できましたら、またお会いしたいです。後、もし勉強で分からない事がありましたら何でも聞いてください。それではお返事をお待ちしております。 河野まゆら』


(まゆタソ~‼)


 レイラはキーボードに顔をつけてニヤニヤと口元が緩んだ。


「まゆタソ、すぐメールをくれるなんてマジ天使」


 レイラのその笑いはいつもの清楚な微笑みとは全く違うモノであった。

 そして、「よし」と気合をいれると、顔を上げてパソコンの画面を見るとすごい速さで返事を打ち始めた。


 “まゆらさん 本日は私の悩んでいたものを解決して下さりありがとうございます。とても感謝致しております。私は家庭の事情で確実なお約束はできませんが明日の午前中にまた図書館で勉強しようと思っています。それではお会いできる日を楽しみにしております。大道寺レイラ”


 全てを打ち終わり手を止めた。まゆらが“河野まゆら”とフルネームを記載してくれたのだからレイラも“大道寺レイラ”と打った。 

 しかし、“大道寺”であることを伝えていいか迷い、“大道寺”をけしてだだ“レイラ”とした。


(まゆタソが俺と同じ学校に入れば、“大道寺”であることはバレるだが……今は普通のオトモダチをしてぇな)


 レイラはメールを下書き保存した。


 次に “桜華学園~ときめきの学園生活~” とブラウザにうち検索をかけた。


「あ~、やっぱり該当なしか。前世だと一発で出てきたのになぁ」


 レイラは机に肘を付いて両手で自分の顔に触れた。そして、両手で頬をつぶしたり上げたりした。それから額を抑えた。


(あーこれなから攻略サイト見とくんだった。ネタバレになるから、まゆタソのプロフィールくらいしか見てねぇんだよだ)


 ふと時計に目をやると21時を指していた。


「やべ、寝なくちゃ」


 21時半になると見回りが来る。そこで寝ていないとやっていたことを細かく確認されるのだ。

 何か作業するならば朝なのだが、レイラは起きることができなかった。何度も挑戦するのだがトメが起こしにくるまで起きることができないのだ。

 目覚ましをかけても無意識に止めてしまっている。


「はぁ」


 レイラはため息を付きながらベッドへ入った。


 翌朝、いつも通り家政婦のトメに起こされベッド上に座ってぼーっとしていた。部屋をゆっくり見まわしたが寝た時と一切変わった様子はない。


「レイラさん、着替えますよ」


 トメに呼ばれ「はぁい」と気の抜けた返事をしてゆっくりベッドから立ち上がった。そして、ふらふらとトメの方へ向かった。

 トメはクローゼットから膝丈に黒いスカートと首元にリボンのついた白いブラウスを用意していた。トメのもとに着くと着替えさせられ、背中をそっと押されて鏡台まで移動する。


 レイラはそれに抵抗することなく鏡台に座った。目の前の大きな鏡には寝起きのまぬけ面したレイラが写っていた。


「レイラさん今日は午後から日舞のお稽古があります。午前中は時間がありますがどこか行かれますか」

「とーしょーかーん」


 レイラはあくびをしながら答えた。トメは苦笑しながら「承知いたしました」といって髪を結いはじめた。


「今日は暑いので上げますね」

「あーい」                               


 トメはレイラの髪まとめてポニーテールを作った。レイラの髪は長いため頭の上の方で縛っても毛先は肩を超える。それを三つ編みにして頭の上でまとめてお団子をつくっていく。


「トメは器用だな」

「ありがとうございます。はい出来ましたよ」


 そう言って、トメはバックミラーを持ってくるとレイラの髪をうつした。すべての髪がまとまりキレイなお団子ができていた。

 レイラはトメに立ち上がる様にいわれたので従った。


「それでは洗顔に向かってください。私は出かける準備をしておきますね」


 トメは立ち上がったレイラ背中を軽く押して、部屋の扉まで誘導した。レイラはトメに抵抗することなる扉に向かって歩いた。


 トメが部屋の扉を開けて、進むよう言った。そこでレイラは扉の前で一度立ち止まり深呼吸をするとにこりと笑顔を作った。


「ありがとうございます」


 レイラは背筋を伸ばすとゆっくりと部屋の外にでた。そしてその後をトメがついていく。


「準備はいつもどおりで構いませんか?」

「よろしくお願い致しますわ」

「承知いたしました」


 レイラが洗面所にはいるとトメは頭を下げて扉を閉めた。それを確認すると、彼女は洗面台で歯みがきをしながら、自分の顔をみた。


 大道寺レイラだと言われればそんな気がするが、ゲームのレイラの顔がうろ覚えのため断言はできなかった。


 居間に行くといつもの様に、タエコが明るく出迎えてくれた。朝の挨拶をするとカウンターに座り朝食を食べ、それが終わり片付けているとリョウが現れた。


 レイラは笑顔で彼を出迎えた。すると、すぐにリョウもレイラの存在に気づいた。


「おはようございます。お兄様」

「おはようございます。レイラさん」 


 お互いににこやかに笑顔で挨拶を交わした。その後すぐに、レイラはリョウに「それでは失礼致します」といとその場後にした。


 廊下にでるとそこにはトメがいた。そして、彼女の手にはレイラの鞄があった。


「そろそろ行かれますか?」

「ありがとうございます。そうしますわ。とても助かります」


 そう言ってレイラはもう一度洗面台へ行き身なりを整えると車へと向かった。車につくとそこにはレイラの鞄を持ったトメと後部座席のドアを開けて待っていた運転手いた。


「行ってらっしゃいませ。レイラさん」

「ありがとうございます」


 トメから鞄を受け取ると車に乗り込んだ。

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