第25話 交易

 僕たちはラーマスに到着した。


 商業都市と言うだけあって、活気ある都市だった。


 皆、一度は訪れたことがあるのか、特にはしゃいだりはしていなかった。


 まずは奴隷市場へと向かう。


 奴隷の売買は、基本的に帝国内では合法とされている。

 トレンス王国でも、違法ではないようだが、犯罪を犯した者であったり、戦争で捕らえた敵兵以外は、取引は禁じられている。


 まあ、実際問題、本当に犯罪者かどうか確認するのは、難しいので、そうじゃない人も普通に取引されているとは思うけど。


 ただ、奴隷商は、奴隷がどんな出自かある程度見る目があるようで、犯罪者はきつい場所に売り込んで、そうでないものは、楽な場所に売るという事をやっているとは、噂では聞いたことはある。


 人身売買自体には抵抗は感じるけど、あくまで売るのは犯罪者だ。余罪を調べたら、本来は死罪になるくらいの罪を犯している可能性もある。


 少なくとも、今回ロンドを攫って暴行したのは、間違いなく犯罪だ。


 特に売ることに罪悪感などは抱かなくてもいいだろう。


 僕は奴隷商人に、湖賊たちの詳細を説明した後売った。


 中々の金になった。


 最後恨めしそうな目で僕を見ていたけど、自業自得だと思う。


 そのあと、宝を売る。

 これも思ったより金になる。


 価値にすると、ハクシュトアが一年で徴収する税の、五倍くらいの金額が貰えた。


 元々税金は少ないとはいえ、これは大量である。


 相当、盗んでいたようだな、あの湖賊団は。


 稼いだ金で、交易船の改修に必要な材料を仕入れた。


 ちなみに、これに関して、一緒に戦った領民たちから、きちんと使っていいか了承は得ている。


 元々、大きな交易船を持って、ラーマスなどの都市と交易が出来るようになればいいとは、ハクシュトアの住民たちも思っていた事であった。


 必要な素材を仕入れたらハクシュトアに帰還する。


 僕は、成長魔法で住民の器用さと、それから造船技能を上げた。


 かなりの速度で、船の改修は進んだ。


 古くはなっていたが、思っていより状態は悪くなかったので、船の工事は数日で終了した。


 その工事をしている間、僕は領民の才能を開花させていった。


 お金になりやすい、才能と言えば、鍛冶であったり裁縫であったり、木工であったり、職人の技量が必要なものである。


 五十人ほどの領民に成長魔法を使用した。


 当然、鍛冶職人に何て興味ないし、才能があったとしても職人なんかになりたくない、と言う人の鍛冶の技能を成長させても意味はないので、事前にある程度人柄などを調べて、やってくれそうな人の技能を成長させた。


 素材はラーマスに大量に売ってある。


 交易船の改修が終わった後、交易船を動かして素材を仕入れに行った。


 湖賊の宝を売って得た金が、まだまだ残っていたのでそれを使用した。


 原料を持ち帰り、領民たちに仕事をしてもらい、それを売りにいく。


 そして、それは思った以上の売り上げになった。


 鍛冶職人に様々な武器を作って貰ったのだが、どれも一級品の物で、町の一番腕のいい鍛冶師が作る物よりも、質の良いものをハクシュトアの鍛冶職人たちは作っていた。


 その鍛冶師が自分の武器につけている値段は、相当な高値だった。


 庶民用では絶対に手が出せないほどの値段である。


 原価の20倍くらいの値段だ。


 当然、質が良いからと言って、いきなりそこまでの値段で売ることは出来ない。


 長年の積み重ねで、認知度を上げた結果、町の鍛冶屋は高値で武具を売れるようになったのだろう。


 僕たちは、その鍛冶屋の半分の値段を付けて売ったら、それが飛ぶように売れた。


 傭兵などは、そこそこ金を持っており、町で一番の鍛冶屋の剣は買えないが、ハクシュトアの剣なら買えると、買っていった。

 戦いを生業にしている職業にとっては、武器は生命線なので、多少金をいとわずに買ってくれた。


 半分でも原価の十倍くらいの値段なので、かなりの利益が出た。


 服や木工なども、そこそこ金を持っている商人に買われたりした。デザインの良さを気に入られた。


 服などは原価がさらに安いので、相当儲かった。


 一回売りに行っただけだが、凄まじい利益が出たので、今後どうなるかちょっと僕はちょっとだけ恐ろしくなった。

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