第24話 帰還後
僕たちは湖賊から押収した船で、ハクシュトアに戻った。
ハクシュトアで、待っていた人たちは、見慣れぬ巨大な船がやってきたのを見て、非常に困惑したようであるが、僕たちであるとわかって安心したようだった。
宝は一旦、領主の館に運び込む。
湖賊から押収した船の改修費用に当てたり、新しい船を買うことに使いたい。
私的な目的で使用する気は、一切なかった。
捕まえた湖賊たちは、どうするか協議した結果、処刑はせずに奴隷として街に売るべき、だという結論に達した。
確かにムカつく奴らではあるが、一応ロンドやレンティは、死んだりはしていない。治らない傷を負ったわけではもないので、殺してしまうほどではないというのが一つと、単純に殺すより売ったほうが、メリットになるからである。
犯罪者の奴隷は、基本的に酷い扱いを受けることが多いので、結局死ぬことになる可能性が、高そうではある。
今まで湖賊として、好き勝手やってきたのだろうから、当然の報いと言えばそれまでかもしれない。
湖賊を売り捌いたり、宝を売りに行ったりするのは、明日にすると決めた。
それから、勝利を祝ったパーティーを開いた後、僕は領主の館に戻り、眠りについた。
○
翌日。
「起きてくださいご主人様。起きてください」
ゆさゆさと誰かが僕の体を揺する。
ゆっくりと目を開けて、揺すっている人の顔を確認した。
「……レンティ?」
ロンドの娘である、レンティが僕の体を揺すっていた。
なぜレンティが?
良くみると彼女は今までとは違う装いをしていた。
ていうかこの服は……
いわゆるメイド服という奴なのでは?
「えーと……なぜレンティが僕を? そしてその服は?」
「身の回りのお世話をすると言ったじゃないですか。それに相応しい格好です。昔この館にはメイドさんがいたらしくて、その人の服を着ています。ちょっとボロボロになっていましたけど、リンちゃんに直してもらったんですよ」
事情を一気に説明した。
「いや……えーと……身の回りのお世話って、確かに言ってたけどさ……そこまでしなくていいっていうか」
「やらせてください! 自分の身と父の身を救われて、何もやらないわけにはいかないんです!」
昨日と同じ主張をレンティはした。
ずっと嫌っていたのに、ここまでころっと変われるものなのかな? と思うくらいの代わりよう。
まあ、確かに命を救われるってのは大きいことだけどさ。
「とにかく、その……どんなことでもご命令ください。何でもやりますから……」
そう言われて、僕は若干良からぬ想像をしてしまった。
レンティの豊満な胸が、僕の目に入る。
その視線にレンティは気づいたようだ。
少し顔を赤くして、
「その……Hな命令でも……大丈夫ですよ?」
と言ってきた。
「いやいやいや、しないから! え、えーとそうだ! 料理作ってくれると嬉しいな!」
「あ、そ、そうですか」
ちょっとだけ残念そうにレンティはいう。
も、もしかしてして欲しかったのか?
い、いやそんわけないか!
レンティは料理を作りにいったが、
「あれ?」
すでに作られていた。
ファリアナが今で通り作っていたようである。
「何でしょうか、レンティさんのその格好は」
「え、えーと、今日からライル様にお仕えしようと思ってたんですけど」
「そうですか。それは良いことです。しかし、すみません。レンティさんの分は作っておりませんでした。今から、急いでお作りします」
「え、ええ? 良いですよ! 自分で作りますから!」
レンティが慌てて止めた。
「あのファリアナさんは、メイドさんだったんですか?」
「いえ、私は騎士です。ですが、メイドのような仕事もこなす事ができます」
「そ、そうですか。いやいや、駄目です! 騎士様がそのような真似をしては! ファリアナ様も、私の恩人です! お二人のお世話を今日からしますよ」
「私の世話……? ふむ……それはまた変わった……まあ、別に問題はありませんが。仕事が減って助かります」
ファリアナは自分が世話をされる立場になることに、違和感を抱いているようだった。
どうやらシンシアの世話をずっとしてきたんだろうな。
レンティは、ファリアナほどではないが、家事はそこそこ出来た。
正直、彼女をメイドにしたままでいいのか、疑問ではあるが、やりたいと言っているんだし、強引に止める必要はないかもな。
僕はその後、宝や捕縛した湖賊たちを連れて、ラーマスへと向かった。
押収したあの船を使うと、ラーマスでは湖賊と間違えられて、大変なことになりかねないので、数隻の漁船を使ってラーマスには向かった。
交易するには大きさが足りないのだが、ラーマスに行く事自体は、問題なく可能である。
ファリアナは今回はついてこない。
ハクシュトアの領地運営を僕がいない間、やってくれることに。
護衛などはバイアーやアンドリュー、魔法の使えるルートにお願いした。
ルートは酒場の経営があるのだが、取引するには口のうまいやつが必要だろと言って、酒場を一時休業にして、来ることになった。
また、ラーマスへは時間がかるということで、その間のお世話がかりとして、レンティはついてくることに
これから先、レンティはずっと僕のそばにいそうな気がする。
彼女は可愛いし、一緒にいて嫌ということはない。
しかし、何でもおっしゃってください、何でもしますよ、などの言葉をよく口にするので、男としては良からぬ行動に出そうで少し怖かった。
船の上で数日過ごして、ラーマスに到着した。
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