第8話 サーチ

 僕はサーチが発動するよう念じた。何度も魔法を使ったので、魔法名を言わなくても、発動させることが出来るようになってる。


 サーチを発動すると、ファリアナの真横に、四角い枠が発生した。その枠の中に、文字と数字が書いてある。


 ステータス

 身体能力:156/158

 器用さ:91/101

 知力:121/122


 習得技能

 剣術Lv88 馬術Lv65 槍術Lv64 体術Lv60 弓術Lv54 兵術Lv50 算術Lv45 政務Lv44 料理Lv40 理学Lv38


 と書かれていた。


「何かファリアナさんの横になんか出たんだけど、数字とか文字が書かれてるよ」

「正常に魔法が発動したようですね。これに書かれているのが、私の『ステータス』と習得技能のレベルが書かれています」

「ステータス?」


 聞き慣れない言葉だった。


「人の能力を数値化したものです。高ければ高いほど優秀です」


 成長魔法を使えば、この数値が上がるのか。

 サーチを使えば、どのような形で能力が上がるのか分かる、という意味が分かった。


 でも二つあるけど、これはどういう意味なんだ?


「身体能力とか器用さとか横に、数字が二つ書いてあるけど……なんで2つ書いてあるの?」

「これは左が現在の値、右が限界の値を意味しています。ステータスは限界以上には上げることは出来ません」

「そういえば、限界値を上げる魔法ってのがあったね。もしかして限界値は生まれつき決まっているの?」

「はい。才能と呼ばれているものですね」


 なるほど……

 僕は正直、魔法以外に何をやっても、あまり上手くないから、限界値が低いんだな……


「下のは技能だよね。これも数字が高い方がいいんだろうけど……でも、おかしいな十個しか書いてないよ」


 歩行とか、それ以外の技能もありそうだが、十個しかない。


「これは、高い技能順に十個だけ表示されているようです。全部ではありません」

「へー。でもそれなら歩行とかって高そうだけどないよね。毎日歩いているのに」

「闇雲に歩いても歩行技術は上がりません。剣をただ振るだけでは、あまり練習にならないのと同じでしょう。どう歩けばより早く歩けるのか、それらを真剣に考えて練習していたら、技能レベルも高くなっているはずです」

「そ、そこまで考えて歩く人は、確かにあんまりいなさそうだね……」


 弛まぬ練習をしないと、技能は上達しないようだ。僕の持つスキルアップは、練習せずに上達可能なので、結構すごい魔法なのかもしれない。


「あ、そうだ。この数値って、どのくらいあれば高いのか低いのかが分からないんだけど」

「一般的にステータスは百二十以上あれば優秀と言われています。90くらいが平均です。技能レベルは、50あれば、一流と言われるくらいの腕を持っていると考えていいです」

「そ、それを考えるとファリアナさんすごく優秀だ。身体能力と知力は120超えてるし」

「そうなのですか。いい数字だったようで何よりです」

「ん? あれ? もしかして知らなかったんですか?」


 さっきまで成長魔法の説明を受けていたので、知っていると思ったが。


「私は成長魔法を実際に使っている人を見たのは、今日が初めてです。かつて使っていた人が残した資料を読み、知識を頭に叩き込んだに過ぎません」

「え、そ、そうなんだ。何か、凄い冷静にペラペラ語るから、何でも知ってると思っていた」


 王家をあげて隠している魔法なだけに、使える人は本当にいないんだろうな。


 もしかすると、現時点では僕以外誰も使えないのかもしれない。


「……ていうか、自分の数値は見えるんじゃ? 横にある四角の枠は見えないの?」

「? ああ、サーチで出た枠のことですか。これは魔法を使用した者にしか、見ることはできません」


 めっちゃ横にあるのに、僕にしか見えないんだ。


 てか、これいつ消えるんだ? 

 もしかしてずっとあるの?


 と思ったら消えた。時間制限があるようだった。書き写しておけばよかった。


「とりあえず成長魔法の説明は、今日はここまでにいたしましょう。知識は全て頭に入っていますので、何か疑問点があれば、その都度ご質問ください」


 僕もこれ以上一気に説明されたら、頭がぐちゃぐちゃになるので、説明を切り上げるのは賛成だった。


 しかし、ファリアナさんは、サーチして見たステータスでは、頭も良くて身体能力も高い、完璧超人のようだ。


 補佐役としてはこれ以上ない人なのかもしれない。


 ただ、会ってから一度も表情を変えてないので、やっぱりそこはちょっと怖い。


 顔自体は非常に整っていて、綺麗なので、もっと笑えばいいと思うんだけど。余計なお世話かな。


「これから領民たちに挨拶をしましょう。領主をするのなら、領民に慕われなければいけませんので」

「だ、大丈夫ですかね。いきなり、余所者が領主なんて」

「間違いなく歓迎はされませんね」

「や、やっぱり」

「でも、大丈夫です。ライル様の魔法の力で、領地をよくしていけば、いずれ認められます。否定されても、挫けず頑張りましょう」

「はい」


 こうして、領民たちに挨拶をすることになった。





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