第6話 悪化

 西谷大地の症状はお薬を服用しても悪化する一方である。朝目が覚めて、夜眠りにつくまで、幻聴は激しく言葉の攻撃を続けた。

 塩田恵との不仲にもつながる。静かな図書館で二人は読書や執筆をするも、西谷大地が幻聴の影響で集中出来なかったり、とても文学活動が出来る状態ではなかった。

 恵が大地を心配そうに見つめている。大地は苦しそうに頭を抱えている。幻聴から盗作呼ばわりや、書こうとする文章を幻聴に先に言われたりして、西谷大地の精神状態は塩田恵の目から見ても悪化するのがわかった。

「大地、無理をしなくても大丈夫だよ」

 塩田恵がそう言うも、西谷大地は視野が段々と狭くなっている。大地は公募用の短編小説を意地でも書き上げると。明らかに西谷大地は無理をしている。幻聴は、ついに図書館の利用者が大地の悪口を言っているように聞こえ始める。

 西谷大地は、自分の持ち物を置いたまま、怒りに身を任せて図書館をひとり出た。

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