オカルト研究部(仮)Ⅲ

「ところで、どうするんだってどうするんだ?」


 一つ大人の階段を上ったユキが話を戻す。


「そうだったそうだった。危うく忘れるところだった。ったく、気を付けてくれよな、ユキ」

「私が悪いのか!?」

「大まかにいえばユキのせいだ、多分」

「そんなふわふわしたノリで罪をかぶせてくるなー!」


 強いて言うならアンナが原因なのだが、冗談でも言えない。だって後が怖いから。


「じー」


 当の本人は不満なのかジト目で見てくる。

 キャラを考えろキャラを。そもそもユキや七海みたいにノリノリで驚いてくれないだろうが。


「じーー」


 ぐっ、圧力が増してきた……!

 からかってみろよと挑発されている気分だ。

 だがやらぬ。俺は長い物には巻かれろタイプなのだ。……ならやれよって話か。


「じ「同好会結成か!? それとも部活まで駆け上げるか!!?」ちっ」


 舌打ちしたよこの人。お上品な見た目な方にされると怖い。

 ユキだと全然怖くないのに。


「なるほど! それは確かに大切だな!」


 全然怖くない方は手のひらをポンと叩き、可愛らしく納得を示す。


「その前に海斗を「ぶ、部活にするなら後二人は欲しいけどな!」ぶす」


 怖い方は多分怖いことを呟いたと思う。

 聞きたくないから大声でかき消しちゃった。

 ぶすに繋がる言葉って何よ! 何なのよ! 言ってみなさい!


(ぶっ潰す)


 はっ!? アンナの心の声が聞こえた気がする!!?


「ユキ、いざとなったら俺を守ってくれ」

「は? どうした? 頭おかしくなったのか?」


 それはちょっと言い過ぎではないですか? 傷つきますよ?


「海斗の奴、暑さでおかしくなっちまった」


 アンナに報告するのは何故だ。目の前にいるのだから言わなくてもわかってるよ。


「暑さは関係ないわよ。だって海斗だもの」


 頭おかしいのはデフォルトですみたいな言い方しないでください。


「確かに」


 確かに!?


「暑さのせいにしちまった……。お天道様ごめんなさい」

「謝る相手が違うよね!」

「あん?」


 なんで威嚇されるんですか僕。


「私をからかって」

「私をのけ者にした」

「「謝るのはどっち?」」


 ……ほほー、もしかして二人が仲良くなった今、俺ってば数の暴力にさらされちゃう?


「ごめんなさい」

「ふん、わかればよろしい」


 腕を組み、満足そうに鼻をならすユキ。


「からかうなら私にしなさい」


 どうしてもからかってほしいアンナ。


「からかわれても何にも楽しくないぜ?」

「そうなの? 楽しそうに見えたけど」

「ええー!」

「どちらにせよ、私はきっと楽しめるから大丈夫よ。海斗があの手この手で構ってくれるなんて今から楽しみだわ」


 あの手この手ってそんな大層なものでは……試行錯誤しろって遠回しに要求してるわけか、これ。


「はっ!」


 俺がげんなりしている横でユキがしまったと言わんばかりに仰け反る。


「か、海斗!」

「はい海斗です」

「た、たまにはからかっても、い、いいからな!」

「それで結局同好会で良いのか?」

「な、なんでスルーするんだよ!」


 だって意味わかんないじゃん。

 めんどくさーい。


「めんどくさそうな顔するなよな!」

「はっはっは」

「笑ってごまかすな!」

「めんどくせー!」

「はっきり言うなー! 自分でもわかってるってのー!」

「はいはーい、会議開くわよ」


 すったもんだの末、ユキの機嫌を見ながら時たまからかい、アンナは積極的にからかうことが決まった。

 ついでに当面は同好会で、(勧誘はしないけど)部員が増えたら部活にしようとの方針も決まった。

 ……ついで扱いで良いのか、オカルト研究部(仮)。


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