第47話

アスカと冒険者数十名がダンジョンから出てきた俺達を出迎えた。

ハイブーガの討伐を報告すると冒険者から歓声が上がった。


ギルドマスターのリーガンへの報告を済ませた後、ギルドを出たところで冒険者から酒場に誘われた。


ルーテの一件を知らない者たちにとってはこの任務は大成功だろう。だが、俺は早く宿に帰り、冷水を頭から浴びたかった。


「セツ、こうゆう時は飲もう。主役が居ないと場が冷めるってもんだろ?」


レイナはそう言って、俺を半ば強制的に酒場へと押し込んだ。そして、いつものように笑い、いつものようにエールを飲んだ。


冒険者から一気飲みの勝負を持ちかけられれば快諾し、その全てに勝利していた。


俺はレイナのペースに合わせるようにただエールを流し込んだ。エールはやけに冷たく、いつもは喉に心地よく刺さる炭酸の刺激が、今日はやけに不快に感じた。


気づいたら、酒場で飲んでいるのは俺とレイナだけになっていた。ほとんどの冒険者は帰っていて、何人かは酒場の床で酔いつぶれていた。


コップいっぱいに注がれたお代わりのエールが4つテーブルに置かれる。


「今日は好きなだけ飲んでってくださいね。いつでもお呼びください」


店員はそう言って店の奥の方へと姿を消した。


「気を使わせちゃったかな」


レイナが照れくさそうに笑う。


「付き合わせてごめんね」


俺は首を横に振った。


「ダンジョンの中のこと、変に勘ぐられても困るからさ」


冒険者には、大量発生の根源だったハイブーガ2体を討伐したとだけ伝えた。アスカとリーガンにも同様に報告した。ルーテ、そして妹の死体は燃やしたため、俺たちしか事実を知らない。

作戦は大成功。そこからの流れを断ち切らないことでルーテとの約束を守ったのだと、俺はいまさら気付いた。


「貴女は好きな人と一緒になってね」


レイナは、ルーテの言葉を口にする。


「セツ、一緒になる?」


突然の言葉に驚き、飲みかけていたエールで少しむせる。


「酔ってるのか?」


「少しね……」


レイナは少し眠そうな顔をしているが、顔色も通常通りで特に酒に酔った様子はない。


「セツ、私を女として見れる?」


「見てるよ。レイナは素敵だ。前にも言っただろ?」


「私の裸を見ても?」


レイナの言葉で、忘れることにした記憶が蘇った。


今日の朝、俺は水浴び場でレイナの裸を見た。


しなやかに鍛え上げられたレイナの肉体は程よく引き締まり、とても美しかった。褐色のきめ細かい肌には水が滴り、いつも以上に輝いていた。



そして……、臀部には異物が見えた。

それは、全てのブーガに付いてる尻尾に似ていた。


「私はハーフ・ブーガだ」


レイナの告白は俺だけに届いた。

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