第34話

――「さて、これからの話をしよう。まずは冒険者登録だな」


切り替えの早さは冒険者ならではだろうか?リーガンは笑みを浮かべて話を進めた。


俺が異世界からの転生者であることを知るリーガンはギルドについて簡単に説明してくれた。おかげで俺でもおおよその仕組みを知ることができた。


ギルドの主な役割は冒険者に対する仕事の斡旋である。住民の要請や被害を「依頼」として公開する。また、素材の買い取りや冒険者への情報提供など各種支援も行う。


冒険者はA・B・C・D・Eの5つの#等級__ランク__#に分けられる。Eが弱く、Aが強い。

ギルドが管理する依頼も同様の等級が付けられており、力量に見合った依頼を見つけるための示準となる。


Eが最下層ではあるものの、全体の5割がE級冒険者であり、生計を立てて行く分には問題がないらしい。

トスマンテのギルドにおける依頼、そして討伐対象となるモンスターも大半がE級となる。


冒険者として登録するにはギルドが定める試験で合格する必要があり、E級であっても冒険者である時点で貴重な戦力とみなされる。


なお、俺が狩ってきたモンスターでいうと銀狼や#牙猪__きばい__#はE級、大銀狼や大牙猪はD級に相当する。ダンジョンを抜けて集落の近くに出没するモンスターはすべてがE級だった。街を守る守護者としてもE級相当の実力で事足りるということだろう。


「クルクの手紙から察するに、セツの実力はD級に相当する。だが、念のため自分の目でセツの腕前を確かめたい。

いいか?」


「もちろんだ。立ち合いか?」


「それでもいいんだが、D級冒険者は全員依頼に出ていてな。俺はこの通り高齢だし、アスカは弓使いだ。実力を測れるものがいない。良ければ、アスカと一緒にモンスターを討伐してきてくれないか?アスカは元D級だ。冒険者としての心得も教えてもらうといい」


おれはその提案を快く了承した。


「今日はもうじき日が暮れるので、モンスター討伐は明日にしましょう。街の南にある森には、銀狼や牙猪なども生息しています。そちらでよろしいでしょうか?」


俺が戦いなれていることを考慮してくれたのだろう。


「ブーガじゃダメか?」


「ダンテさんからお聞きでしたか?」


俺は頷いた。

人間の女を攫うブーガというモンスターが大量発生している


ギルドへ案内してくれたダンテが言っていた。俺はずっとそれが気になっていた。被害が少しでも防げるのであれば、一刻も早く、少しでも多く討伐したい。


「女を攫うんだろう。何のためだ?」


「子孫を残すためです」

アスカは表情を少し曇らせて答えた。


「人間の女を襲い、孕ませて子供を産ませるんだ。当然ブーガが産まれる」


助けに入るようにリーガンが代わりに答える。たしかに女の口からは答えづらいだろう。


「なぜ、ブーガ同志で子を作らない?」


「奴らの9割はオスだ。そして寿命も約5年と比較的短命だ。子孫繁栄の本能だろうな」


本能だからと言って許されるはずはない。


「強いのか?」


「力は強いがE級だ。めったに被害は出ない。だが最近は数が多くてな。3日前にも1人攫われた。幸い、ことが起こる前に救えたが心身ともに弱っている」


#姦淫__かんいん__#は主の武昌様が最も厳しく取り締まった罪だ。

武昌様は女性の尊厳を汚されることをひどく嫌っていた。


配下の武士が、酒の勢いで姦淫の罪を犯したとき、ひどく興奮し、直々に叱責していたのをとても良く覚えている。まさに鬼の形相といえた。


「ならば、その脅威を狩ろう。一匹でも多く、少しでも早く」


「クルク様もブーガを憎んでおりました……良いでしょう。明日は畜生退治といたしましょう」


アスカは、不敵な笑みを浮かべて、そう答えた。

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