琴乃家の日常 4th Season
小糸匠
第49話 2度目の入院と久しぶりの君津
新学期に入って2週間。3年生になって1年から特待生なりに頑張ってきたものの、俺は所詮疲れやすい発達障害の人間だ。もうそれは自覚してある。別に悪いことを言うつもりはないのだが、どうも最近はバイト終わりにめまいがする。それはバイトから帰ってきたあとに愛央からぎゅーって抱きつかれるときもそうだ。
4月16日火曜日、ついにその日が来てしまった。いつものように5限の授業を終えて帰ろうとした途端・・・
たく「やばい、めっちゃくらくらする」
先生「大丈夫か?」
たく「申し訳ありません、大丈夫じゃないです」
弱音を吐くのがなかなかない俺は珍しく弱音を吐いていた。ここ3日間くらいまともに寝ず、愛央とあいちゃんの世話をしていたからだ。
あお「たっくん・・・」
先生「とりあえず病院へ行くか。そこまで起きてられるか?」
たく「病院行くなら俺の家から行ったほうが近いですよほんと」
先生「帰るか?」
たく「家の医務室で見てもらったほうが多分早いと思います。愛央たち、泣いちゃってるし。医務室に俺専属の発達とかなんでも見てくれる先生がいるのでその先生に見てもらうことにします」
俺はこう告げて、愛央と帰った。ぶっちゃけ頭の体温は39.9℃で40℃近い高熱が今出ている。
あお「たっくん!ごめんね!無理させちゃって!」
たく「あんたが別に悪いってわけじゃない。ただ俺が働きすぎただけだ。そらそうよね。朝から夜まで働くのを2回もやってたんだから」
あお「(´。>ω<)ぎゅー♡離さない!」
たく「ばか。あにしてんの。んなことするから頑張っちまって倒れるんだべさ」
あお「休んでほしいの。少なくとも今のたっくんは無理しすぎてるから!」
たく「それもそっか。愛央、ごめんね」
あい「たったー、よちよち」
たく「ありがと。乗る?」
あい「あい!」
このあと何故か意識を失ったように寝てしまい、次気付いたときには21話と同じ病院のベッドの上だった。
あお「良かった・・・」
たく「あーこれは、うんごめんよ。泣いたっぺ?」
あお「うん」
あい「たったー」
あお「あいちゃんもやっぱり心配してたのかも」
たく「そうだろうね。あいちゃん、ごめんね」
あい「あい!」
あお「たっくん、また休んじゃうね」
たく「うーん。ほんと俺大丈夫なんかねぇ?」
あお「無理しないように働けたらいいんだけどね」
たく「それができないのがこの世だよ」
俺はバイトをこのあたり公休を取っていたのでこのあと3日入院したのち、千葉県君津市にある祖母宅へ行ったのだ。もちろん、退院してから愛央とふたりで。
3日後の午前10時に退院した俺はまず家に帰り、愛央とあいちゃんにぎゅーってしてあげた。一応言っておくがこれはうちの社交辞令なので勘違いしないようご注意願いたい。
たく「ただいまー」
あお「おかえり〜!(´。>ω<)ぎゅー♡」
たく「やっぱりな。あいちゃーん」
あい「きゅぴ?あい!(´。>ω<)ぎゅー♡」
たく「わりーな、迷惑かけちまって」
あお「大丈夫なの?」
たく「今はとりあえず休んだほうがいいかも。愛央、君津行くよ」
あお「えっ!おばあちゃんちに行くの!?」
たく「行くよ。ようやくね。いやまぁひっさかたぶりにあんひとあんべんけんがあじしてんだけんねぇ」
あお「さすがたっくん。方言が強い・・・おばあちゃんまだ元気にしてたって言ってるから大丈夫だよ!愛央も着替えて行く!」
あい「あいたんも!」
たく「あそうじゃん。産まれて半年後に連れてったけどそれ以来か」
あお「3人で、泊まりに行っちゃおう!」
たく「ちょうど連休だしな。行くべ」
あい「あい!」
そして俺は父親にもう言ってあったのでバスに乗り行った。高速バスでだいたい2時間位なので実は結構な近場だったりする。
君津市は人口8万人の小さい市。市内で一番大きい駅、君津駅でさえ4桁乗降者数なのでTHE 田舎という感じの街だ。そんな駅からさらにバスに乗ること15分。ついに俺らのおばあちゃんちに着いたのだ。
あお「おばーちゃん!ひさしぶり!」
祖母「あら、こんにちは。お宅どちらさん?」
たく「ねぇいつものやつやんなくていいから」
あい「ばーば!あい!」
祖母「おや、今日は赤ちゃんも一緒かい?」
あい「あいたんあかちゃんじゃないもん!」
たく「はー2歳だよ」
祖母「はー2歳?早いねぇ」
あお「愛央たち、もうすぐ高校生終わるよ」
祖母「あらまぁ。はー終わっちまうのかい?」
たく「んだぁ。だけんが、あと1年だ。愛央だってまだおらんこたすきだけんど、あじすんべかわからんしな」
君津に来るとまるで人が変わったように方言が出るがこれはもう普通の光景だったりしていた。愛央は方言が喋れないので俺のばあちゃんには伝わりにくい。だから俺が方言で喋ることにしてるのだ。
あい「たったー、ぐちゅー」
あお「たっくーん。お昼食べたいよ〜」
たく「なぁばあちゃん、お昼あじすんだ?」
祖母「あじしようねぇ?たくみくんとあおちゃんあにこっしゃってほしい?」
あお「たっくん、どういう意味?」
たく「おら味噌汁こっしゃってほしい。・・・何作るかってこと」
あお「愛央はたっくんと同じのでいいかなぁ」
たく「愛央も同じのこっしゃってほしいって。あじょうだ?あいちゃんはあんも食えんからこれでいいべさ」
祖母「じゃあこっしゃるよ」
そしてばあちゃんが昼飯を作り始めた。俺はあいちゃんと遊んだり、あとは愛央のチアに付き合ったりしてた。
あい「たったー、でんしゃはしってる!」
たく「えまじ!?あすげ、E235じゃん!」
あい「かっこいい!」
たく「あれ乗って帰ろうな」
あい「あい!」
あお「ねぇたっくん!GO! GO! Let's Go! We are No.1! Fooooo〜♡どう?上手いかな?」
たく「すごい上手じゃん。つか可愛すぎだって」
あお「ありがとう!」
祖母「ほれできたよー」
たく「んだいまいくぁー。ちょ待っててね愛央」
あお「うん♡」
たく「おまたせ。ひっさしぶりに食べるね」
あお「すごーい!」
あい「あいたんのは?」
たく「あるよー。俺の少し分けてやるからそれ飲む?」
あい「あい!」
そして3人で飲んだ味噌汁はかなり美味しかった。やっぱり舌が祖母味になってるなぁと思った瞬間だった。その後食べ終えると、愛央が甘え出した。
あお「たーぁっくーん♡ 」
たく「あに・・・そんなに上目遣いして・・・」
あお「久しぶりにゆっくりできるんだから・・・愛央とデートしよっ!」
たく「っつっても、いくら君津とはいえ行く場所あんの?木更津の潮見一丁目にあるイオンモール木更津かあっこのアピタくらいじゃねぇか?」
あお「今日のデートはね・・・チアデート♡」
たく「は???」
あお「そのままの意味だよっ。愛央が持ってくのはチアのぽんぽんだけ!」
たく「え、払うの俺?」
あお「おねがーい」
たく「ちょ待っててね。ばーさーん」
祖母「あにした?」
たく「おらたちゃいまから木更津のイオン行くんだけんどあんかかってくんもんあんか?」
祖母「んだー黒酢買ってきてくんねぇか?お金あんのかい?」
たく「親父が社長、めぐも別会社の社長だから金はあるさ。ってか黒酢だけでいいんか?あたあんもいらんの?」
祖母「たっくんとあおちゃんが食べんもの買っておいで。あいちゃんはあんかこっしゃってやんなおいねぇべさ」
たく「いやあんでんねぇよんなもん。あいちゃんはおらがあんとかすんべ。とりあえず黒酢だけかっとくるわ」
祖母「おっけ」
あお「でね、愛央がぽんぽんを持ってね、たっくんゲーセン行くはずだからそこでチアやっちゃう!」
たく「人多いぞー今日の木更津築地は」
あお「えーだめかなぁー?」
たく「さすがにおいねぇべ」
あい「くぅ・・・・くぅ・・・・」
たく「それにしてもあいちゃんよく寝てるね」
あお「うん、かわいいっ♡」
たく「俺に似てるな」
あお「寝始めたら起きないもんね」
たく「行こっか。チアデート」
あお「いいの?」
たく「店の中ではやらない前提な。でも公園とかでちょっと応援ってのはありかも」
あお「じゃあ・・・行こっ。あいちゃんも連れてね」
たく「とりあえず君津駅でなければ」
そして俺らは君津駅まで出てきた。君津駅のバスロタは北口南口両方あるが木更津管内は南口からの発車。畑沢線には乗れないのでイオン木更津線に乗ることにした。というかそれしか選択肢がない。
放送「お待たせ致しました。毎度ご乗車ありがとうございます。このバスは、港南台一丁目、イオンモール木更津、木更津市民会館前経由、木更津駅西口行きです。次は
たく「やっぱこれしか勝たんわ」
あお「それな!このバス大好き!」
たく「あいちゃんも好きなはず。ってか乗ったことねぇからあんまわかんねぇか」
あい「きゅぴ・・・」
たく「あいちゃん?」
あい「ふぁぁ〜。きゅぴ?」
たく「起きた」
あい「どこいってるの?」
たく「木更津のイオン」
あい「あいたんたちいってるの?」
たく「そうだよ。愛央がデート行きたいってったから」
あお「お姉ちゃんといっしょに外見る?」
あい「あい!」
木更津イオンまでの23分。あいちゃんと愛央は起伏の多い木更津畑沢地区を楽しんでいた。
イオンモール木更津につくと真っ先に買い物を済ませ、色々巡った。木更津は俺一人でたまに来るけど、愛央とくるときは色々巡るからまた違った目線で回れる。
少しして愛央と一緒に公園に行くことにした。一番近いのは桜井南公園。そこで愛央はチアをしたいらしい。
あお「ほんとに・・・やらせてくれるんだね」
たく「やりたいのにやらせないのはおいねぇべ」
あい「ねーねー!きゅぴらっぱー!」
あお「すごい!あいちゃんありがとう!じゃあお礼に・・・なでなで♡」
あい「へへっ!あい!」
あお「たっくんも、明日からFight♡」
たく「お・・・おう」
あい「たったー、かえろー」
たく「16時半かぁ、帰ろっか」
あい「あい!」
あお「うん!」
こうして俺らは帰りの便で寝つつ、ばあちゃん家に帰ったのだった。
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