空き箱型収納箱

Rark

お題『銃』

 早速だが、二人の女子高生が争っていた!

「こっちのモリのほうが強いです!」

「いーや、こっちのモップのほうが強い!」

 そう、二人はどちらの武器が強いかで争っていたのだ!

「モリは刺し貫くことができます!」

「モップは掃除ができる!」

「モップは刺さらない!」

「モリは掃除ができない!」

 額を合わせて言い争いをしていたのである!顔が距離近いぞ。


 なぜこんなことになってしまったのか。元々は二人は仲のいい関係であった。

 しかし仲が良かったが故か、世にいう「解釈違い」が発生し、親友同士は血を血で争う戦いを初めてしまったのである!!


「ふー……分かってないな、なぜ戦いで清掃能力が必要になるんですか」

「殺傷能力だけだと戦闘にしか使えないじゃん!多面的に物事を見ないとだめだよ!」

「オイオイ……マルチツールになんか頼ってたら同質の武器に当たった時に力負けしちゃうでしょう」

「何を!?でも掃除は出来ないんだよ!?」

 話はさっぱり前に進まず、建設的な議論はもはや望めなかった。こうなればどうする?

「なら強さを証明して見せなさい!」

「お~やってやろうじゃんよ!」

 二人は手に自らの武器を持ち、距離を離した。そう、実戦で決着を付けるしか彼女たちが納得する道はたぶんおそらく無い。


「ウオーッ!!」

 先に駆け出したのはモリ女子高生だ!けっこう野太い掛け声と共にモップを破壊せんと迫る!!

「オラーッ!!」

「もっふ!!」

 受け手に回ったモップ女子高生は巧みに回避し、モリ女子高生の顔にモップのブラシを直撃させたのだ!!

「そ、想像以上にキツかった……」

「どうだ!モップの強さを思い知ったか!」

「まだですよ!まだモリの威力が出てないから比較が出来てないじゃないですか!」

「やってみいや!!」

 しかし……モリは重い!!それ故取り回しが遅くなってしまい、素早いモップ捌きに対して案外ぜんぜんうまく動けなかった!!

「モリが悪いじゃないんです!!私が上手く扱えないだけなんです!!」

 モリ女子高生は半泣きになってきた。これにはモップ女子高生も止まらざるを得なかった。

「ねえ……こんなの不毛じゃない?」

モップ女子高生も真実に気が付き始めてしまったが、それは彼女だけの話だったのだ。

「隙ありーッ!!」

 突如モリがモップの柄に突き刺さる!!棒と短いモップが生まれてしまった!!

「汚ねェーッ!?」

「フッフッフッ……所詮モップは掃除器具!このような破壊力はないでしょう……」

「ちょっと待って、いまのこっすい作戦について一言申したいんだけど」

「モップともわからぬ状態に変えてくれますわぁぁぁぁ!!」

「おいてめぇーーッ!!」

 モップ女子高生は獲物を中央で折られ、勝手が変わってしまったが故にたちまち防戦一方!しかもモリは一撃重いんでダメージは加速していく!!

「ちょっと待って!!今気がついたけど相手の武器を破壊したら勝ちっていうレギュレーションはこっちが相当不利じゃない!?」

「素直に負けやがれですわーーッ!!」

 もはや狂戦士と化したモリ女子高生はモップ女子高生の声にはもはや耳を貸さぬ!!こうなると意地という炉に火が焚べられる!!

「このアマーッ!!ならモップで叩きのめしてやらあ!!」

「やってみやがれですよぉーーッ!!」

 おお……見よ!モップ女子高生の戦闘スタイルが短いモップと棒による二刀流の暴風と化している!!

 だがモリ女子高生も負けぬ!最初の鈍さが信じられぬほどの連撃を繰り出しているではないか!!まるで雷の嵐である!!

 もはや風神と雷神が争っているかのような巨大な力のぶつかり合い!!鳥は怯え飛び去り、地は裂けていく!

 ところがである!!思わず戦いの手を止めるほどの光が、二人に向かって降り注いだのである!!

「あれは!?」

 二人が見たものは女子高生であった。女子高生と言ってもただの女子高生ではない。光り輝く女子高生であった。女子高生は神々しく光りつつ何らかの風を発生させているらしく、女子高生の服が神々しくなびく。

 あんまりにもバサバサするので女子高生のスカートはかなり際どい感じになっていたが、何しろ光っているので女子高生の下着はほぼ見えなかった。

 ところでここまで女子高生を連呼したが、そうしないとこの存在を表現しきれない気がしたのでそうさせて頂いた。

「我貴様きさんらを鎮圧する用意有り!直ちに投降されたし。」

 光り輝く女子高生は神々しい感じの声を作ってそう語りかけた。

「何。」

「貴公にそのような権限があるというのか?私にはそうとは思えぬ。」

 二人はこの乱入に抗議をした。雌雄を決したかったのだ。

「私は正直に言えば神なり、雷のごとき鉄槌で持って人々を裁く権利あり。」

 このように女子高生は説明をしたが、反発心を高めるだけであった。

「なんたる傲慢な物言いか。」

「貴様のような者に止められる筋合いなどない、先に貴様を屠ってくれよう。」

 迸る怒りに基づいて二人の女子高生は光る女子高生に飛びかかった。

「争いを止めよ!貴様らが争いをすればなんかとにかくえらいことになってこの宇宙は崩壊への未来へ進んでしまうのであるぞ。」

「与太話を!どこの馬の骨ともわからぬ女が。」

 しかし二人がかりでいくら攻撃を浴びせてもこの光る女子高生にはびくともせぬ。それどころか説教を続けたのである。

「仏の顔も三度までと言う。私の顔は無量大数と言えるほどあるが、止まらぬのであれば、貴様らを裁くしかないであるぞ。」

「裁いてみせろ。」

 二人の挑発に乗ったか、それとも元々そうするところであったか。光り輝く女子高生は長き神槍を取り出すと、瞬く間に遠くへ飛び去り、そして神槍の先から雷撃が如し一撃を撃ち放った。

「なんだ、あれは。」

「うわあ。」

 その一撃は大いなる光を生み出し、二人を瞬く間に飲み込んでしまった。

 しばらく光り輝き続けたが、それが終わると、学び舎で使われるとされる紺色の水着に包まれた二人がいた。着ていたはずの服も、持っていたはずの武器も、もはやない。

「何が起きたのだ。」

「これでは戦えぬ。」

 いくら女子高生と言えど二人も女(おなご)であった。薄い布きれ一枚では羞恥に耐えられなかったのだ。

「しばらくそこで反省するが良い。服は後で戻る。もし、もう一度争いをやろうというなら、同じことをするぞ。」

「なんという……。」

 そう言って光り輝く女子高生は飛び去っていった。

 残された二人は同じ恐怖を得たせいか、いつのまにか抱き合っていることに気がついた。

「争いは良くない。」

「小生もそう思う。」

 二人は、争いの愚かさを学んだ。



 なぜなら、争えば、水着にされてしまうからである。



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