助っ人
人口が多い関東エリアを担当する「
環は、他人が日常生活に入ってくることを嫌がっていたが、環境が劇的に改善したので内心、喜んだ。
祓では、たいてい
祓の場合は、
これまで情報収集が時間のロスにつながっていたが、真智がサポートに入ったことで楽になった。真智は窓口で依頼を受けるだけでなく、
祓では清宝が話を聞く役目は変わらないが、真智の資料から対象は絞られている。実物を視るとすぐに
仕事の流れに慣れてくると、祓のときの依頼主対応は真智が担当して、清宝は打ち合わせのため外出することもでてきた。環の役目は変わらず、祓のときに
最近は青龍寺一族の打ち合わせがひんぱんに行われるようになっていて、清宝は外出することが多くなった。環は
夕食後、清宝と環は居間で
「そうだ、環。父さんは出向で家を空けるぞ。
父さんがいない間、
「いきなりだな」
「関東よりもほかの県のほうが『
関東、とくに東京は開発され続けている土地だから、封が解かれたときに、異能者が対処してきたんだろう。
それに比べて地方は、
破られることなく維持してきたから、封は機能していたけど、今回の地震で壊れてしまったのだろう」
「オレが行ったほうがよくねーか?」
「
環は本家の人たちと一緒に行動できるのか?」
「げっ、遠慮するわ」
「はっはっはっ」
嫌そうな顔をする環を見て清宝が笑った。ひさしぶりに家に笑い声が響いたので環は和んだ。気を緩めてお茶を飲んでいたところ、清宝が衝撃の
「地方へ
「あ? いらねーよ! オレ一人でも十分だぜ!?」
「決定事項だ」
決まったことなら仕方ないが、環は幼少期の嫌な記憶がよみがえり、本家の関係者がさらに増えることに、ぶつぶつ文句をたれる。
清宝は不服そうにしている環を横目で見ているが、見つめる父親の目はやさしく穏やかな笑みも浮かべている。しばし様子を見ていたが言葉を付け加えた。
「それと」
「まだなんかあるのかよ!」
噛みつくように声をあげて清宝を見るが、口の悪さには慣れている。清宝はお茶を飲み干すと湯飲みを机に置いてにっこり笑って言った。
「環は人見知りだからね。環専用の助っ人も呼んだよ」
「……は?」
環は意味がわからずにいて、清宝の次の言葉を待っていたところで玄関の呼び鈴が鳴った。こんな時間に誰だとぼやきながら立ち上がって玄関へと向かう。見送りながら清宝は「タイミングがいいね」とつぶやいた。
「よっ! 環!」
玄関を開けると元気な声が飛ぶ。環は固まって口を半分開けている。突然の訪問者は幼なじみともいえる友人の
「
環は東京地震以降、青龍寺の
「実は桂くんのお父さんも
弥勒院は当分、祓ができる異能者がいなくなってしまう。つまり桂くんの教師が不在になるわけだ。
そこで環の夜の
「待てよ、親父。勝手に決めるな。同行も危険なんだぜ?」
「環がいるから大丈夫だろう?」
「オレより桂の親父さんといたほうが安全だろ。
親父たちの
「一緒にいるのは本家の人たちだぞ?
みんな頭が固いから桂くんは居づらいだろうし、環と一緒にいるほうが勉強になる」
「大丈夫だよ、環。足手まといにならないよう、同行しながら修行するからさ」
「…………(桂の
環があれやこれやと反論するものの、結局二人に押し切られて
「なんで桂は大荷物持ってるんだ?」
「なんでって……慣れるまでは一日一緒にいようと思って」
「あ!? 夜に合流すりゃあいいだろう!」
「慣れたらそうするって」
「……桂、おまえ楽しんでねーか? 修学旅行じゃねえんだぞ!」
「ん――? 環の気のせいだろ~。おじゃましま~す。
で、どの部屋を借りたらいいのかな?」
「おい!!」
清宝はひさしぶりに環の大声を聞き、友人との再会で明るくなった空間にほんわかとなる。地震後、環は休むこともなく、きつい
環が弱音を言わない分、ストレスをためているのではと心配していた。そこで地方へ出向して不在となる間、桂に
廊下で騒ぎながら部屋へ案内する環を見る清宝の顔はやさしい。友人がいてくれることで、少しでも気持ちが楽になれればと願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます