第45話 (ライルハート視点)
俺の言葉に反応し現れた公爵家当主アレスルージュ。
しばらくの間、着飾ったその男が口を開くことはなかった。
だが、少しして耐えきれなくなったように叫び始めた。
「……ふざけるな!ふざけるふざけるぁ!」
「っ!」
血走った目で、異様に叫ぶアレスルージュに、アイリスが身体を震わせる。
そんな彼女をアレスルージュから隠すように身体をずらしながら、俺は思う。
……今さらながら、公爵家どころか貴族にさえ相応しいと思えないほど、感情のコントロールができない男だと。
そんな俺の考えに気づいたわけではないだろうが、俺を睨むアレスルージュの目にさらなる怒気が浮かぶ。
「どうして隠していたライルハート!本当に、神童だったのなら、どうしてそれを言わなかった!お前がその力さえ、使っていれば!」
「はっ、まだ分かってないのか?何で俺が力を隠したのか?」
「なっ!?」
その怒気を真っ向から受けて、思わず鼻で笑ってしまった俺に、アレスルージュの顔はさらに赤くなる。
しかし、それを無視して俺は告げる。
「お前達に利用される未来なんて、お断りだからだよ」
その言葉に一瞬、アレスルージュは呆然と固まる。
しかし、すぐにその顔にさらなる怒りを露わにして、俺を睨みつけた。
「くそ、くそ!無能が!私の計画を邪魔しよって!お前さえ、お前さえ私の思い通り動いていれば、今私は宰相の座を手にしていたはず……ひっ!」
そのアレスルージュの怒りの叫びは、その顔すれすれに通過した風の刃により強引に止められることとなった。
背後、壁が崩れる音に、アレスルージュは顔を青くして黙る。
それを確認し、俺は口を開いた。
「無能は、俺の擬態を見抜けなかったお前だよ。アレスルージュ」
その言葉に、アレスルージュは怒りを覚えながらも口を開けない。
流石のアレスルージュも、ようやく自分の状況が理解できてきたのだろう。
「そもそも、だ」
その理解の遅さを嘲笑いながら、俺は告げる。
「お前はまだ、今まで実力を隠してきた俺がどうしてここにいるのか、理解できてないのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます