第31話
指輪の意味がわからず戸惑う私に、ライルハート様は真剣な顔で口を開いた。
「……俺の今からの言葉を了承してくれるなら、この指輪を受け取って欲しい」
そう告げたライルハート様の顔には、どこか不安が浮かんでいた。
その言葉の意味も行動も、私には分からなかった。
が、私に断るという選択肢はなかった。
「はい」
ライルハート様の行動の理由は、私には分からない。
ただ、これから起きることが、ライルハート様にとってとても重要な意味を持つことだけは理解できて、それを知って断ることなど私がする訳が無かった。
ライルハート様は、安心したように笑って口を開いた。
「俺はあの日からずつと、自分の能力を避けるように生きていた。だから、アイリスには俺が能力を使える理由になってほしい」
そう言葉を重ねるうち、ライルハート様の顔には不安の色が濃くなっていった。
それは、私の見覚えのある表情だった。
この国が乱れていた時、ライルハート様が浮かべていた、酷く脆い印象を受ける表情。
それを目にした時、私は自然と口を開いていた。
「私は、ライルハート様のことを恐ろしいなんて思っていませんわ」
そう言いながら、私はライルハート様の持つ指輪へと手を伸ばした。
「だから、ちゃんと手間がかかることを言わないと、お願いとは言いませんからね」
「っ!」
どんな頼みでも了承する、そう私が暗に告げていることを理解し、ライルハート様は一瞬目を見開く。
けれど、直ぐにそこ顔を笑顔に変えた。
「………ありがとう」
「………っ!」
次の瞬間、ライルハート様に抱き締められ私は動揺する。
が、そんな私を話すことなかライルハート様は耳元で口を動かした……
「この指輪にかけて誓う。俺は持ちうる能力の全てを使うことになったとしても、必ずアイリスを守ってみせる」
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