第3話

突然現れたアリミナにたいし、私は動揺を隠せなかった。

アリミナの好みはもっと煌びやかな男性だ。

それ故に、アリミナはライルハート様にたいして興味を示すことはなかった。

なのに何故、今日に限ってアリミナはこんな場所にやって来たのか?


だが、その疑問を直接アリミナにぶつけることなんてできず、私はやんわりと彼女の申し出を断ることにする。


「アリミナ、ありがとう。でも、ライルハート様をお見送りした後お父様のところにいくから大丈夫よ」


「出来るだけ早くお父様の元に行った方が良いと思いますわ。当主命令とお父様はいっておりましたので」


「……え?」


……私の中で、不信感が膨れ上がったのはその時だった。


当主命令、それは緊急の要件であることを示すものだ。

もちろん、滅多なことで下されるものではない。

にも関わらず、ライルハート様がいるこの状況で当主命令は下された。


そのことに、アリミナのことも合わせて私は胸騒ぎを覚える。

まるで良くないことが起こる前兆のような。


しかし、幾ら不信感を覚えようとも、当主命令を無視することはできない。


「……分かったわ。ライルハート様のことをお願いするわ」


「はい、お姉様」


釈然としなさを感じながらも、アリミナに後を託した私は、ライルハート様へと頭を下げた。


「ライルハート様、突然のことで申し訳ありません」


「いや、気にしていない。無理言って来たのはこちらだしな。今日はありがとう」


「はい!」


ライルハート様の言葉に珍しく私を気遣うような響きがこもっているのの気づき、私は頬を緩める。


ライルハート様は、私と居るときでさえあまり感情を露にしない。

それでも時々、こうして私を気にかけてくれることがあって──その瞬間が、私はどうしようもなく大好きだった。


「ふふ」


その後、口元を緩めて歩き出した私頭の中、先程までの胸騒ぎはすっかりと抜けていた……。

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