自称ヒロインに婚約者を……奪われませんでした
陰茸
プロローグ
「初めましてお姉様。よろしくお願いいたします」
初めてその少女を見た時、私は彼女に挨拶を返すことすらできなかった。
それ程にアリミナというその少女は美しかった。
艶やかな金髪に、白い肌。
未だ少女であるにも関わらず、その身体からは蠱惑的な雰囲気さえ感じる。
先程まで平民であったなど信じれない程ドレスの似合う彼女は、まるで女神だった。
「アイリス、彼女はたしかに平民の女性が出産した子供だが、私の子供で君の妹だ。仲良くしてくれ」
「は、はい!」
お父様の言葉に私は我に帰り、私はようやく挨拶を返す。
そして今更ながら、彼女に挨拶ができていなかったことに思い至り微笑みかける。
「初めましてアリミナ。貴方の姉となるアイリスよ。こちらこそこれからよろしくね」
その時、私の心にあったのは純粋な喜びだった。
こんな綺麗な女の子が新しく家族になるということに、私はただはしゃいでいたのだ。
亡くなってしまった母の代わりに、妹を支えてあげなければならない。
私がアリミナの母親がわりになろう。
そんな決意さえ、私は抱いていた。
だが、その時の私は知らなかった。
父が連れてきた新しい妹。
彼女が持つ、特別な力の存在を。
……その能力を使い、アリミナが暴走し始める未来を。
私の挨拶に、アリミナは優雅な笑みを浮かべる。
「はい、お姉様!」
それが私とアリミナの初めての出会いだった……。
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