動物図鑑

五木林

ダンゴムシ

 小学四年生の自由研究でダンゴムシが何を食べるのか観察した。


 家の庭やら近所の公園やらでダンゴムシを何匹か捕まえてくると虫籠の中に入れた。といっても捕まえたのはほとんど父親で、私は周りを、ダンゴムシはどこだー、と走り回っていただけだった。そんな私に父は、お前の研究だろ、といいつつもせっせと手ごろな大きさの石をひっくり返していた。


 次に虫籠の四隅に餌を置き、どの餌に一番寄ってくるのかを調べた。何を置いたらいいか先に考えてなかったので私は盛大に迷った。その日は真夏日で虫籠を外に置いておいたので、早くしないとダンゴムシが干からびてしまうと慌てた。ダンゴムシは慌てるくらいなら早く出してくれと思ったことだろう。ダンゴムシだから野菜を食べるだろうと私は思い、キュウリやらメロンの皮に近い部分やらトマトやらを使うことにした。


 他には何がいいだろうかと考えていると、ふと思いついた。こんなに暑いのだからダンゴムシにアイスクリームでも差し入れしてやるのはどうかと。

 結果二つの虫籠の四隅に計八つの食材が居座ることとなったが、アイスクリームの存在感は格別のものであった。


 ダンゴムシたちはそれぞれ気にいった食材のところへ向かっていった。一番人気はきゅうりとメロンだ。アイスクリームにも何匹か向かっていった。しばらく観察していたが私は自分の失敗に気づいた。ダンゴムシはアイスクリームを食べようと飛び込んでいったのだが、真夏なので当然、溶ける。ダンゴムシがアイスクリームの犠牲となったのだ。さらにアイスクリームの勢いはとどまることを知らず他の食材のところまで侵食していった。結果的に虫籠の中にはダンゴムシの大量の溺死体と運よく生き残ったダンゴムシが残ることとなった。私はその情景に申し訳なさを感じたのであったが、アイスクリームに溺れて死んだということを少し可笑しくも思っていた。


 私は彼らの存在がなかったかのように自由研究をまとめた。なぜだか後日表彰されることになったのだが、父は、ダンゴムシ捕まえたの俺じゃん、とぼやいていた。

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